腰痛と足のしびれ 【鍼灸師が執筆・監修】
腰痛の随伴症状として、比較的起きやすい【足のしびれ】について解説しています。痛みはつらい感覚ですが、痺れも同様に不快な感覚です。
なぜ痺れが起こるのか、原因は?
本当に腰からきている痺れなの?
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このページでは、腰に問題がある場合のしびれが起こるメカニズムや、原因部位によっての症状の現れ方の違いについて解説しています。
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記事については医療系国家資格である鍼灸師の八幡太郎が執筆・編集・監修しています。
腰の痛みは辛いものですが、それに随伴するしびれや感覚の鈍麻も不快な感覚で、人を不安にさせるものです。この項目では、腰に問題がありそのことにより痺れや感覚鈍麻が起こるメカニズムについて解説しています。
腰痛があり足のしびれや痛み、感覚の鈍麻がある場合にはいくつかの原因が考えられます。
しびれが起きるメカニズム
多くの場合、何らかの原因で馬尾神経や神経根が摩擦やサイトカインと呼ばれる炎症を引き起こす物質により炎症が起きていたり、圧迫を受けるなどして痛みやしびれの症状が起きています。
背骨の脊柱管の中を脊髄は走行していますが、脊髄は腰椎1〜2番の高さで終わり、その先は馬尾神経と呼ばれる末梢神経の束に置き換わります。
この馬尾神経や、馬尾神経から分岐した神経根が腫瘍や椎間板ヘルニアによって圧迫を受けると、腰痛や足のしびれ、感覚の鈍麻を発症します。
そして、その影響を受けた神経分布領域に症状を発現します。
症状が出現するエリア
神経はそれぞれ特定の支配領域を持っています。多少の個人差は存在しますが、人の腰部から下肢にかけての神経分布は下の図のようになっています。
腰椎は英語表記でLumbar(ランバー)、仙骨はSacrum(セイクラム)と呼び表します。
その頭文字をとって、腰椎1〜5番をL1〜5というように表記し、それぞれの高さから分岐した末梢神経をL1神経、L2神経などのように呼びます。仙骨からの神経はS1、S2というふうになります。
椎間板ヘルニアによる痺れ
【椎間板ヘルニア】では腰椎4〜5間、腰椎5〜仙骨、腰椎3〜4間の順に好発し、この3つの部位で腰部椎間板ヘルニアの98%を占めます。腰椎1〜2番付近で椎間板ヘルニアが発生すること稀であり、殆どありません。
例えば、椎間板ヘルニアで第5腰神経根が障害を受けると腰痛の他、右の図のエリアに足のしびれや痛みが起こることがあります。
神経根の障害では、通常右か左のどちらかに症状が現れるのが普通であり、両側に症状がみられるのは稀なことです。
馬尾障害による下肢症状
椎間板ヘルニアであっても中心性ヘルニアであったり、脊髄腫瘍や脊柱管狭窄症であったりすると馬尾神経の障害が起き、腰痛以外の足の症状では下図のようなエリアに痛みや痺れの症状が現れます。
脊柱管狭窄症による馬尾神経に対する障害では、通常は腰痛の症状よりも下肢症状の方が強く出る傾向があります。
足のしびれや痛み、筋力低下、感覚の鈍麻がみられ、背中を丸めると症状が軽減するようでしたら脊柱管狭窄症の可能性があります。
馬尾症状がみられる疾患は他に、変形脊椎症、腰椎変性すべり症などもあります。
他にも腰痛と足のしびれを起こす疾患はいくつか考えられます。腰に問題があり下肢症状が起こる疾患としては、仙腸関節性腰痛、大腰筋性腰痛、梨状筋症候群などが考えられます。
仙腸関節性腰痛による下肢症状
仙腸関節性腰痛による下肢症状は、漠然とした広いエリアに発症するというよりも、跳び跳びの島状に痛みや足のしびれが起きる特徴があります。
殆どの場合に臀部に痛みが起き、しびれが伴うのはどちらかと言えば少数です。
大腰筋性腰痛による下肢症状
大腰筋性腰痛では主に大腿前面に痛みや痺れが起きることがあります。
大腰筋は腰の深部にあるインナーマッスルで、第1〜第4腰椎椎体に付着しています。
この部分で大腿神経、外側大腿皮神経、腸骨下腹神経、鼡径神経、陰部大腿神経などが大腰筋の筋束で圧迫されると痺れや感覚の鈍麻が起きます。
梨状筋症候群による下肢症状
梨状筋症候群は臀部から脚に向かう坐骨神経が障害を受けることで発症します。
坐骨神経は臀部付近では直径10ミリ以上もあり、また梨状筋は生まれつきの個人差が生じやすい筋肉であるため、臀部は障害を起こしやすい部位となります。
腰に原因となる問題が発生していなくても下記のように、下肢にしびれや痛み、感覚鈍麻などの症状が現れる事があります。
糖尿病性神経障害
例えば、糖尿病性神経障害では手足末端の痺れ、虫が這っているような感覚、痛み、灼熱感、感覚鈍麻などが起きることがあります。
これはソルビトールと呼ばれる物質が代謝障害で神経細胞に付着すること、循環障害で神経に酸素や栄養素が運ばれなくなるためと考えられています。
いくつかの種類の腰痛を例にとり症状の出方を比較しましたが、腰痛を伴う足の痺れや痛み、感覚の鈍麻は概ね神経の分布領域と重なるエリアに発症するため、下肢症状のエリアから障害が発生している部位を推定出来ます。
一口に足のしびれや痛みと言っても、腰には全く原因となる障害がないのに足にしびれや痛みが起こることもあります。
次の項目で、腰に問題がなくても脚に痺れや痛み、感覚の鈍麻などを引き起こす疾患をいくつかピックアップしています。
腰には原因がなくても足にしびれをもたらす疾患が存在します。それらの疾患の中には対処を急がなければ命に関わったり、重篤な後遺障害が残るケースもあり注意が必要です。
脳梗塞 / 脳出血
脳の血管が詰まったり、血管から出血することによって発症します。
症状は多くの場合身体の片側に起こり、片側の手足、片足、片腕、片側の顔面などのように症状が現れ、時には片側の視野狭窄などもみられます。痺れや感覚の鈍麻、筋力低下が起こります。
脳梗塞や脳出血の前兆現象として一過性脳虚血発作が起きることがあり、この前兆を見逃さない事が予後を大きく左右します。一過性脳虚血発作では一時的な片手、片足などの筋力低下、しびれ、感覚の鈍麻のような症状が現れます。
一過性脳虚血発作は症状が現れても数分から数十分で症状が消失してします。重篤感がないため、まさに一過性の事として見過ごしてしまうことが少なくありません。
一時的なことであっても、上記のような症状がみられたら脳神経外科の受診をお勧めします。
下肢閉塞性動脈硬化症
生活習慣病の動脈硬化により徐々に血管が細くなり循環障害を起こすことが原因です。下肢の動脈に問題が生じると、足にしびれや痛みが起きることがあります。
治療開始しないと徐々に症状が進行します。症状は4期に分けられます。
T〜W期の症状
- U期では、間欠性跛行と呼ばれる現象が起こります。間欠性跛行では一定の距離を歩くと足の痛みで歩けなくなり、数分間休憩すると再び歩くことが出来ます。血液の循環不全で筋肉が虚血状態になるために起こる現象です。
- V期になると、じっと安静にしていても痛みが起こるようになります。
- W期は末期の状態で、極度の虚血により末梢の細胞が栄養されなくなり、潰瘍や壊死が起こります。この状態まで放置すると、最悪の場合には下肢を切断しなければならない事態も起こります。
U期で起きる間欠性跛行は、脊柱管狭窄症でも起きる現象です。鑑別を必要とします。
また、バージャー病と呼ばれる疾患でも、初期には足に痺れの症状が現れ、間欠性跛行や症状の進行に伴い下肢の安静時痛もみられます。
バージャー病は喫煙との因果関係が示唆され、発症者の93%に喫煙歴が認められます。四肢に症状が現れるとされますが、脚に顕著に症状がみられます。人免疫抗体(HLA)の関与が強く疑われていて、血管が炎症性の閉塞を起こします。
上記のような症状がみられたら、循環器科の受診をお勧めします。
ギラン・バレー症候群
難病に分類される疾患で発症率は10万人当たり2人とされています。初期には手足の痺れや感覚の低下を感じ、徐々に筋力が低下し手足が動かなくなります。症状は両手・両脚に出現し、片側のみに症状が現れる事はありません。
自己免疫疾患の一種であり、治療は免疫グロブリンの大量投与などの方法が確立されています。一般に自己免疫疾患は女性に多くみられますが、ギラン・バレー症候群については男性が発症しやすい特徴があります。
発病者の60〜70%が発病の1〜2週間前に風邪のような症状や下痢などを経験しています。これらのウィルスによって免疫系が暴走してしまい、運動神経や感覚神経を破壊してしまっていると考えられています。
治療によって、およそ50%で数か月内に回復に向かい、1年後では60%が完治するとされます。しかし、30%に障害が残り、10%では呼吸筋の麻痺などで治療中に死亡します。
ギラン・バレー症候群では手足の痺れや感覚障害の他、顔面期の麻痺、ろれつが回らなくなる、物が二重に見える複視など脳梗塞や脳出血と似たような症状が現れます。脳血管系の疾患との違いは、両側性という症状の現れ方です。
上記のような症状がみられた場合、神経内科や脳神経科での鑑別診断をお勧めします。
ムズムズ脚症候群
レストレッグス症候群とも呼ばれる疾患です。レストレッグス、ムズムズ…という病名が示すように、足を休息させているときに主にふくらはぎに症状が現れる疾患です。
症状の現れ方には個人差があり、「虫が這っているような感覚」、「びりびり痺れる」、「掻きむしりたくなる感覚」というように幅がありますが、我慢できない程の苦痛を感じます。
脚をリラックスさせている状態が最も症状が現れ、脚を頻繁に動かしていると症状が軽減します。夜に最も症状が現れやすく睡眠を妨げられるため、患者さんは不眠に苦しみます。
脳のドーパミンの分泌障害が原因とされています。作用機序は不明ですがカフェイン、アルコール、喫煙は症状を悪化させるとされます。また、遺伝的素因も示唆され、凡そ60%に血縁者に同じ症状を持つ人がいます。
上記のような症状がみられた場合、神経内科や睡眠障害クリニックなどの受診をお勧めします。
甲状腺機能低下症
甲状腺は身体の活動性を高めたり、代謝を高める甲状腺ホルモンを分泌しています。このホルモンの分泌が低下した状態が甲状腺機能低下症で、症状の一部に手足の痺れが挙げられます。
症状は、手足の痺れ、浮腫み、全身の倦怠感、記憶力の低下、皮膚の乾燥など多彩な症状が現れます。圧倒的に女性に多く発症し、男女比は男性1に対し女性10と言われます。決して稀な病気というわけではなく、全女性のおよそ5%には何らかの甲状腺機能の低下がみられます。
以下の症状のうち半分以上当てはまるようでしたら甲状腺機能低下症の可能性があります。
代表的な症状
- 手足にしびれを感じ、以前より浮腫むようになった
- 瞼に腫れぼったさを感じる
- 便秘がちである
- 肌の乾燥が気になり、保湿剤が手放せない
- 冷え性である。寒がりになった
- 汗をかきにくくなった
- 太りやすくなった
- 日常的にやる気が起きず、倦怠感を感じている
- 何をするにも動きが緩慢になった
- 記憶力が低下した
- 抜け毛が気になる
- 聴力が落ちた気がする
- 声が低くなった気がする
上記のような症状が多く当てはまるようでしたら、内分泌科の受診をお勧めします。
足根管症候群
足根管症候群は足の裏にしびれの症状が起こります。左右両側が痺れることはまずありません。また、足の甲や踵に痺れが起こる事もありません。
足の内くるぶしの下を指で叩いてみたり、圧迫してみたりして症状が誘発出来るようでしたら、足根管症候群の可能性があります。
足の裏に向かう神経は内くるぶしの下を通過します。この部分に存在する神経を通過させるトンネル状の通路を足根管と呼びます。この足根管で神経の圧迫が生じると足根管症候群を発症します。
足根管で神経を圧迫する原因はガングリオンと呼ばれる脂肪の塊でることが多く、他には靭帯の肥厚、静脈瘤などでも症状が現れることがあります。圧迫の原因は様々ですが、まず整形外科での画像検査をお勧めします。
腰痛と足のしびれ / まとめ
足のしびれは腰が原因とは限らず、原因となっている疾患は様々です。
危険な痺れの症状もあり、自己判断が命取りになる事もあります。医師への相談をお勧めします。
また、腰にその原因があり治療により痛みの症状は改善しても、しびれの症状は痛みを改善するよりも時間が掛かるのが普通です。しびれを改善する為には根気が必要であることが少なくありません。
腰痛と足のしびれについていくつかの疾患を例にとり解説しました。あなたのお役に立てたようでしたら幸いです。
関連する情報として【痺れ、痒み、痛み】というページで、神経の働きの違いでそれらの感覚の違いが起こるメカニズムを解説しています。
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