症状のエリアを絞り込んでいく必要があるのは、症状が起きている部位次第で原因の推定が出来るためです。
股関節の痛む部位は、大きく3つのエリアに分けて考える必要があります。
@のエリアで考えられる原因
鼡径靭帯、縫工筋、内転筋に囲まれた@の部位を、解剖学的には大腿三角(scarpa三角)と呼びます。このエリアに痛みがあるときに考えられるのは、変形性股関節症、大腿骨頭壊死、関節リウマチ、発育性股関節脱臼、先天性股関節脱臼、鼡径ヘルニアなどです。また、内転筋付着部の裂離骨折が考えられます。
Aのエリアで考えられる原因
この部位を大転子呼びます。変形性股関節症、大腿骨頭壊死、関節リウマチではこのエリアにも痛みの症状が現れます。他には大転子滑液包炎などが考えられます。
Bのエリアで考えられる原因
骨盤を前方から触れた時、ポコッとした骨に触れることが出来ます。この部位を上前腸骨棘と呼び、縫工筋、大腿筋膜張筋と呼ばれる筋肉が付着しています。筋肉付着部にはストレスが掛りやすく、オーバーユースでの疲労骨折などが起こることがあります。
股関節に痛みが起きるのは上記までに挙げただけでなく、腫瘍や動脈などの脈管系に問題があっても痛みの症状が現れます。
あなたに起きてる症状が上記のエリアにはなく、臀部の股関節付近でしたら【臀部の痛み】のページをご覧ください。
突発性大腿骨頭壊死症は、血液の循環不全によって骨の細胞が
壊死していく疾患です。
初期に骨が壊死した状態までは症状はありませんが、病態が進行し骨が崩れだすと強い痛みに襲われます。
太腿の骨の付け根の部分の循環不全が原因と考えられていますが、根本的な発症原因は突き止められていません。
ステロイド剤の長期使用や、アルコールを常習的に飲む習慣があると発症確立が高くなるため、因果関係が示唆されています。
1週間当たりのアルコール摂取量が400mlを超える生活を続けていた場合、そうでない人に比べ大腿骨頭壊死発症のリスクは10倍になるとされています。
1週間当たりアルコール摂取量400mlとは、目安として以下のようになります。
- ビール500ml(中瓶)×14本
- 日本酒14〜15合
- 焼酎8〜9合
腿骨頭壊死の原因としてステロイド剤によるもの50%、アルコール常飲によるもの35%とされます。
症状
症状は急激な痛みで始まります。大腿骨頭壊死症は初期には無症状で、患者さん自身は発症に気づきません。スポーツ中や重い物を持ち上げた時に病態が進行していると、大腿骨頭が破壊され痛みが起きます。
捻挫などと誤って診断されることが少なくなく、注意が必要です。
治療
大腿骨頭壊死の治療は、保存療法と手術療法に大別されます。
保存療法では装具などによって骨頭にかかる負荷を軽減したり、骨が破壊することを防いだり、疼痛管理を薬剤によって行います。運動療法やリハビリテーションは積極的には行われません。
手術療法は関節温存術と人口関節置換術に大別されます。大腿骨頭壊死は比較的若年でも発症するため、可能な限り関節を温存する方法が選択される傾向にあります。
この疾患は厚生労働省が定める特定疾患に含まれ、難治性の疾患です。早期発見早期治療が予後を大きく左右します。
子供に起こる股関節の痛みにはぺルテス病(Perthes)、化膿性股関節炎、成長痛など、幾つかの疾患がありますが、この項目では誤って捻挫と判断されてしまうこともある大腿骨頭すべり症について解説します。
大腿骨頭すべり症は12〜13歳前後の男児に発症しやすい疾患です。
太腿の骨の付け根の強度が低下したことにより、癒合しきっていない骨頭の部分がずれてしまう事で痛みが起こります。
骨頭の部分の脆弱性を基礎的に持っている子供に発症しますが、発症まではそれに気づかず、転倒やスポーツ中のクロスプレーなどをきっかけに激しい痛みを起こすため、捻挫と判断され治療を遅らせることもあります。
大腿骨頭すべり症は画像検査でなければ発見が困難であるため、誤診率が高い疾患とされています。
特徴
肥満傾向にある12〜13歳の男児に多く発症し、初潮以降の女児には発症しないことから何らかのホルモンの異常で発症すると考えられています。
症状は股関節に荷重が掛ると痛みが起こる他に、太腿を後方に伸ばすようにすると痛みが誘発されますが、外傷による股関節疾患でもみられる症状であるため、判断を難しくします。
治療
治療は基本的に手術での対応となります。過去には保存療法で対応していた時代もありましたが、この疾患は進行性であるため、出来るだけ早期に金属製のボルトや治具での固定を必要とします。
発見され次第、早期の手術が必要です。治療時期を逸すると大腿骨頭壊死などを合併し、より難治度が高い状態に転化してしまう可能性があります。
栗田 ゆかりさん (35歳)
東京都北区
主訴:股関節の痛み
栗田さんは、両側股関節の臼蓋形成不全を基礎的な因子としてお持ちで、約10年ほど前から股関節の痛みに苦しまれてきています。
10年間のうち、9年間ほどは左股関節のみの痛みでしたが、1年ほど前から右側にも痛みが起きるようになり、これまでに、整形外科、カイロプラクティック、AKA博田法、生理食塩水筋膜リリース、ブロック注射、トリガーポイント注射、ボトックス注射、プラセンタ注射というように、およそ考え得る様々な治療を受けてこられています。
しかし、ここに至るまで症状が改善することはなく、最近では痛みで日常生活もままならなくなり、整形外科では手術を受けることを勧められたそうです。
左の写真は栗田さんの股関節のX線写真です。臼蓋が浅く、この状態では股関節周囲に過剰な負荷が掛るため、相当程度の痛みに苦しまれたことが推定できます。
確かに画像では臼蓋形成不全であることが確認できますが、関節裂隙 (骨と骨の隙間) はまだ十分確保されています。整形外科では手術も勧められたようですが、この状態ならば保存療法で症状を改善させることが可能と判断し、治療を開始しました。
具体的には、鍼治療と当院で作成した運動プログラムを実践して頂きました。治療期間約2カ月、8回の治療で症状はほぼ無くなり、緩解と言っても良い状態となりました。
栗田さんは、臼蓋形成不全を基礎的な因子としてお持ちですから、股関節が完全に【治る】事を望むのは現実的ではありませんが、今後は定期的なメンテナンスで良好な状態が維持できるものと考えています。
以下は栗田さんから頂戴した手記です。スマートフォンで読みにくい場合は、手記の下に原文そのままで読みやすく書き起こしてあります。
臼蓋形成不全で股関節の痛みが辛い毎日でした。
一日でも一時間でも痛みから解放されたい私は、股関節専門の施設や様々な医療機関に足を運んでいました。
大学病院では『就寝時に痛くて眠れなくなったら手術しましょう。』という話になっていました。だけど、なるべく手術を回避、又は遅らせたいので、痛みをとってくれる所を探していました。
いちご治療院はホームページを見ると、腰痛専門のような内容でしたが、腰痛に詳しいなら他の部位も応用して対応してくれるかな?と思い電話しました。
初診ではじっくり話を聞いてくれ、『もしかしたら、痛みは治るかもしれない。だけど、問題が骨からきているので完治とはいかず、一度痛みが取れても、自分でケアしていかないといけない。』という話をしてくれました。
現実的な話をしてくれるところに信頼ができ、針治療をお願いすることにしました。いちご治療院の施術は私には辛すぎました。その日は眠れない程でした。クリニック名は『いちご』と可愛いのに
(笑)。
2回目の予約は正直、悩みました。施術後2〜3日は違和感がありましたが、それ以降は痛みが少し緩和されていたので、現在は週1ペースで通っています。これまで7回通い、歩き方を崩すと痛みが出ますが、きちんと歩けば痛みが出なくなっています。
これからも通い続けたいと思っています。施術は辛いですが、受け続けられるのは愛情ある施術だからです。先生は本気で治そうとしてくれます。ただ、本当に駄目なときは先生は見極めて、施術の手を緩めてくれます。←ありがとうございます!
それに、私に合ったサプリメントやストレッチ、トレーニングを教えてくれました。腰痛以外だからこそ、今まで通っていた股関節専門の施設よりも柔軟な視点で見てもらえているのかな?と私は思っています。
本当に相談して良かったです。
佐々木 孝之さん (54歳)
茨城県笠間市
佐々木さんは3年ほど前から、腰と股関節周囲の局在不明瞭な痛みに悩まされていました。
佐々木さんの症状は『 腰と股関節のかなり深い部分に対応に困るような鈍痛が毎日起こる。』というものでした。
腰や股関節周辺の深部に痛みを抱え、整形外科、マッサージ、鍼治療など様々な治療を受けてこられています。しかし…『どんな治療を受けても問題部位に効いている感じがしなかった。』とのことでした。
また、この佐々木さんはエコーガイド下での生理食塩水注入による筋膜リリースも毎週1回、1年間に渡り受けてこられていますが、その手法によっても症状は改善しなかったそうです。
今までのどのような治療法で改善がみられなかったのは、股関節・骨臀部領域の奥深くに原因がある特殊なタイプであったためです。長さ5寸・150mm×太さ1mmの鍼を使用することで、初めて根本的な問題部位にアプローチが可能となりました。
ボールペンの上の2本が長さ5寸・150mm×太さ1mmの鍼です。
5寸の上の鍼が3寸・90mm、その上が1寸6分・50mmの鍼になります。
長さ5寸・150mmという鍼は一般的な鍼灸院ではまず使用することはなく、特殊過ぎるためメーカーに特別注文した鍼です。1mmの太さがあり、平均的な裁縫用の縫い針よりも太い鍼です。
このような刺入方向で、股関節裏面深部にアプローチします。
150mmという長鍼が必要になるのは、このような特殊な部位であるためです。
1mmもの太さが必要なのは、長い鍼で刺入する場合、細い鍼では筋肉などの組織の硬さに負けてしまい、鍼がたわんでしまい鍼先が目的の部位から外れてしまうためです。
1mmの太さの鍼でしたら組織の硬さに負けないため、目的の部位に確実に鍼先を到達させることが出来ます。
臀部の最も外側の見えるのが長さ150mm×太さ1mmの鍼です。股関節周囲の問題の他、腰の深部にも問題があるため、腰部にも3寸・90mmの鍼を使用し、全部で60本ほど使用しています。
以下は佐々木さんから頂戴した手記です。スマートフォンで読みにくい場合は、手記の下に原文そのままで読みやすく書き起こしてあります。
症状は3か月ほどで大きく改善し、現在は月に1回ほどの定期的なメンテナンスで、良好な状態を維持できるようになっています。腰と股関節の症状が大きく改善したことで、念願だったホノルル・マラソンへの出場へ向け取り組まれています。
私がいちご治療院に通い始めたのは、平成28年の暮でした。
通い始まって半年が経過しましたが、今はそれまでの日常的な痛みと痺れから解放されました。それまでは『このまま耐えながら生きていくしかない。』と半ば諦め気味でしたから、今は人生を取り戻したような気持ちです。
私は体力には自信があったので、腰の痛くなる姿勢での農作業を、痛みを無視して早く終わらせ、後で休めばよい、と思って無理をしていました。しかし、5年程前、無理が限界となり、日常的な痛みと痺れとなってしまったのです。
私は、何とかこの痛みから抜け出そうと、整形外科はもちろん様々なマッサージ、鍼灸、生理食塩水注射による筋膜リリースなど、良いと聞くものは取り組んできました。しかし、ある程度の効果は出ましたが、7〜8割の痛み痺れは全く変わることがありませんでした。
いちご治療院では、それまでの鍼灸とは違って、痛みを直接治療していただいている感じがします。使用されている針もかなり長いことから、これまで届かなかった深い患部をしっかり捉えていて、治療の度に痛みの改善が感じられました。それがなんともうれしかったです。
現在は、以前に自分よりも股関節が柔軟になった感じで、心も生き生きとしています。
夢だったホノルルマラソンが、今は目標になっています。