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鍼灸いちご治療院  鍼灸師 八幡太郎 執筆・監修

鍼灸いちご治療院 TEL.03-5876-8989

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  • 腰痛と椅子/座ることのテーゼとアンチテーゼ
坐る姿勢のテーゼとアンチテーゼ

腰痛と椅子 【鍼灸師が執筆・監修】

デスクワークで腰痛が起きた男性デスクワークで腰痛が起こるのはなぜか?なぜ座ると腰が痛むのか?

【座る】ということにスポットを当て、一般的な常識に当てはまらない【腰痛と椅子】との関係について解説しています。
このページは以下の項目で構成されています。
鍼灸いちご治療院 院長・鍼灸師 八幡太郎このサイトは鍼灸いちご治療院が運営しています。

記事については医療系国家資格である鍼灸師の八幡太郎が執筆・編集・監修しています。

 プロローグ・理想的な座る姿勢?

生体力学や人間工学上、理想的な座る姿勢と呼ばれるものがあります。また、それらを考慮して作られた【腰に良い椅子】とされる椅子も存在します。

市販されている腰痛対策本やインターネット上にはそれらの情報が溢れています。【人間工学】に基づく腰痛に良い座る姿勢、腰痛に良い椅子についてはもはや語る事がないくらいです。

私が敢えてこのようなページを設けたのは、一般的に良いとされる【理想的な座る姿勢】や【腰に良い椅子】についてほんの少し疑問を持っているからです。

「理想的な座る姿勢は本当に理想的なのか?」
「その姿勢で座っていれば、本当に腰痛を防げるのか?」
「腰に良い椅子を使っていれば腰痛にならない?」

本当にそうでしょうか?
椅子に座っている男性このページでは【理想的な座る姿勢】、【腰痛と椅子】の関係について一般的に正しいとされるテーゼと、それに対するアンチテーゼで解説しています。

この先を読み進めることで、あなたの『座る』が変わります。

座る事と腰痛の関係1・椎間板の問題

腰痛と椅子に座ることには密接な関係があります。ここでは、椅子に座る事による椎間板への負担について説明しています。
立位正しい座位前傾姿勢の座位

理想的な立位での腰部の椎間板にかかる力を1としたとき、背筋を伸ばした姿勢で椅子に座った時には立位の1.4倍の負荷が椎間板にかかっています。これがさらに前傾姿勢で椅子に座った場合では立位に比べ1.85倍にもなります。

これが座ると痛い腰痛の原因の一つであり、【腰痛と椅子】や【座る姿勢】に多くの人が関心を寄せる理由です。

重力による椎間板への負荷

人の立位での重心位置は、床面から身長の55〜56%の位置となり、個人差はありますが殆どの人は第5腰椎から第2仙椎の位置に相当します。

この腰の重心位置にかかる負荷は体重が60kgの人の場合、上半身の重量は体重のおよそ60%ですから、36kgの負荷を腰が受け止めている事になります。

椎間関節解剖図
36kg全てが椎間板にかかる圧力ではなく、体重60%のさらに30%程となります。

上半身の重量の約20%は椎間関節が受け止めていて、その他50%程を背筋群や靭帯などの軟部組織や、それらが形成する腹腔内圧が受け止めています。



腹腔内圧の模式図

左の図は腹腔内圧の模式図です。

@腹横筋
A多裂筋
B脊柱起立筋
C腹直筋
D横隔膜
E骨盤底筋群

これらの筋肉の存在が腹部の内圧を高めています。
腹腔内圧を言い換えると、張りつめた風船をお腹の中に抱え込んでいるようなものです。



椎間関節や腹腔内圧などの作用で圧力が減弱されるため、体重60kgの人の立位での腰の椎間板にかかる負荷は…

60kg×0.6×0.3=10.8kg

という事になります。体重の60%全てが椎間板にかかっている前提で、話を進めている記述を時折見かけますが、それは誤りです。

これを先ほどの写真で比較すると以下のようになります。
立位でかかる重量座位でかかる重量前傾座位でかかる重量

立位10.8kg、理想的な座位15.12kg、前期姿勢での座位19.98kg、この数値を重力の影響を加味した正しい値に直すと、1N(ニュートン)は0.102kg・f(キログラム重)ですから…

体重60kgの人の椎間板にかかる負荷は立位では105.84N(ニュートン)。理想的とされる座位姿勢で148.176N(ニュートン)。前傾姿勢で椅子に座ると195.804N(ニュートン)の重力負荷がかかっています。

このように、前傾姿勢での座位では立位の1.85倍もの負荷が椎間板にかかるため、人間工学上の【理想的な座る姿勢】と呼ばれる姿勢が一般的に推奨されています。

理想的な座る姿勢

このように、前傾姿勢での座位では立位の1.85倍もの負荷が椎間板にかかるため、人間工学上の【理想的な座る姿勢】と呼ばれる姿勢が一般的に推奨されています。

人間工学上、生体力学上、多くの腰痛情報発信者が推奨する椅子への座り方は、以下のような座り方になります。

理想的な座る姿勢
膝の関節90度、股関節90度、肘関節90度。腰椎が前へ湾曲し過ぎないように、また湾曲がなくなるフラットバックにならないように骨盤を中間位に保ちます。




骨盤中間位のポジションが分かりにくければ、坐骨を椅子の座面にしっかり立てれば、自然に理想的なニュートラル・ポジションになります。

そもそも椅子に座るという行為自体が立位に比べ椎間板に負担を強いる訳ですから、それを少しでも軽減させようと考えるのは当然の帰結です。

同じ腰に負担がかかる【座る】でも、前傾姿勢で椅子に座る事に比べれば【理想的な座る姿勢】では腰の椎間板にかかる負荷は30%も減弱されます。

それを根拠として、【理想的な座る姿勢で座る事】で、座ると痛い腰痛の症状を軽減しよう。腰痛対策がなされた椅子を使用することには意味がある。とするのが多くの腰痛情報発信者の意見であり、腰痛と椅子の関係を論じる上でのテーゼです。

私の意見はそれに対するアンチテーゼであり、突飛なドン・キホーテのように思えるかもしれません。しかし、そこには多くの人が当たり前と考えてきた腰痛に対する常識が邪魔をしてしまい、見えなくなった真理があると自負しています。

ドン・キホーテによる【腰痛と椅子】・【座る姿勢】のアンチテーゼは後ほど御説明します。

なぜ、椎間板に恒常的な負荷が掛る事がまずいのか?

椎間板線維輪の構造
椎間板は髄核と呼ばれる中枢の核と、それを取り巻く線維輪で構成されています。
線維輪は10〜15層の層構造になっていて、その線維は斜め60°の角度で互い違いに走行しています。



線維が互い違いに幾層も重なることで「圧縮」、「引っ張り」、「捻り」、どの方向へ負荷にも耐えられる構造になっています。

線維の密度は、前方と側方は比較的密度が高く強固な構造ですが、後方は前方や側方に比べると密度がやや粗く、ここが椎間板のウィークポイントであり椎間板ヘルニアを発症しやすい部位です。

上記のように、部分的に密度が粗い部分があるだけではなく、椎間板は複合する方向への負荷には弱い特徴があります。
椎間板にかかる負荷の模式図
単純な圧縮・引っ張り・捻りには耐えても、【圧縮+捻り】や【引っ張り+捻り】などの複合する負荷には弱く、そのような負荷を恒常的にかけ続けると椎間板の構造を破たんさせかねません。



これを日常生活に置き換えると【前傾姿勢でデスクに向かい、物を取ろうと腰を捻る】というような動きになります。日常にありふれた動きですが、この動きが繰り返されると椎間板線維輪は劣化しやすくなります。

これが理想的な座る姿勢を望みたい第2の理由です。腰の腰椎が前傾姿勢ではなくニュートラル・ポジションにあれば、物を取るために腰を捻っても単純な【捻り】の負荷のみとなります。

ただし、過度な【捻り】は避ける必要がありますが…。

椎間板には動脈がない?

椎間板には動脈がありません。これは解剖学的事実であり、誰もそれを否定できません。椎間板は人体最大の無血管領域であり、それが他の組織に比べ若年層から劣化が進みやすい理由です。

これも私がドン・キホーテのアンチテーゼを後に述べる理由です。

椎間板の模式図
椎間板には動脈が走行していないため、椎間板は自身の栄養と酸素補給を軟骨終板などの周囲の組織に依存しています。

椎間板はその栄養補給の観点ではスポンジのようなものです。

スポンジは他からの圧力に対し自身の形状を容易に変形させます。圧縮され潰れたスポンジは、復元するとき周囲に水分があれば、その水分を吸い込みます。



椎間板の栄養補給も同様で、圧縮される事と復元する事が繰り返される中で自身の酸素と栄養の補給を行っています。

恒常的な圧縮力が継続すれば、いかに優れた復元力を持つスポンジでも容易には回復しません。それは椎間板も同様で、圧縮し続ける事が継続すればその機能が低下します。

椎間板には動脈が走行していない事、スポンジのような特性を持つが故に、椎間板には恒常的な圧縮力が継続してはまずいのです。
椅子に座るという行為は椎間板に圧縮力をかけ続ける行為です。椎間板の機能的な特性、構造的な特徴を加味し【腰痛と椅子】・【理想的な座る姿勢】の関係は論じる必要があります。
椎間板ヘルニアのイメージ画像椎間板ヘルニアの症状・原因・治療について別にページを設けて詳しく解説しています。併せて参考にしてみてください。

椎間板ヘルニア
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座る事と腰痛の関係2・仙腸関節の問題

腰痛を引き起こす原因の1つに仙腸関節と呼ばれる関節があります。仙腸関節は骨盤に存在する関節であるため、【腰痛と椅子】・【座る事と腰痛】に深く関わる関節です。
仙腸関節解剖図仙腸関節は骨盤裏面の仙骨と、両翼の腸骨で形成される関節です。仙腸関節が原因になる腰痛を【仙腸関節性腰痛】と呼びます。

椎間板ヘルニアなどとは違い、X線やMRIなどの画像検査でも発見できない機能性の腰痛です。


原因不明の腰痛としてどこの病院でも腰痛の原因がつかめなかった場合この腰痛の可能性もあります。
仙腸関節性腰痛のページをご覧ください。

座る事が及ぼす仙腸関節への影響

仙腸関節は半関節と呼ばれ、可動域は小さくわずか数ミリ程度です。歩行時などに衝撃を和らげる働きをします。

立位での仙腸関節への負荷
@の立位では、下肢からの圧力が太ももの骨を介して骨盤を引き締める方向に働きます。

上半身からの圧力とつり合い骨盤は安定した状態となります。

座位での仙腸関節への負荷
しかし、Aのように椅子に座ると坐骨が座面に固定され、坐骨から骨盤を押し広げる力が働きます。

上半身からの圧力と不釣合いとなり、骨盤は不安定な状態となります。


特に女性は男性に比べ坐骨の角度が緩やかなため、椅子に座った時の影響を受けやすい特徴があります。

2枚の図で示したように、椅子に座るという行為は骨盤の仙腸関節が不安定な状態になりやすく、腰痛を招くきっかけにもなります。

仙腸関節にかかる相反する負荷

不安定な骨盤の状態で座ることが、どのような問題を起こすのかが以下の説明です。

骨盤に働く力
理想的な座る姿勢を意識しないと、多くの場合に知らず知らずのうちに前傾姿勢でパソコンに向かってはいないでしょうか?

坐骨が椅子の座面に固定された状態では、骨盤は後ろへ回転する力が働きます。

その時、
@前傾姿勢でデスクに向かうと、仙腸関節の回転軸を中心にA仙骨B腸骨(骨盤)とは反対の方向へ回転しようとします。


そもそも、椅子に座る行為そのものが骨盤を不安定にしているのに、前傾姿勢になるという事は、わずか数ミリの可動域しか持たない仙腸関節に相反する力を加えてしまい、それが腰痛の原因になってしまう事もあります。

更に、脚を組んでデスクに向かい、前傾姿勢を取るのは最悪な座る姿勢になります。骨盤には後ろへ倒れる力が働き、仙骨は前へ倒れます。その状態で脚を組むという事は仙腸関節に捻じれの負担もかける事になります。

そのような負荷をかけ続けていると、くしゃみなどの僅かな刺激でもぎっくり腰を起こす腰になりかねません。
以上のような事を防ぐために【腰痛と椅子】との関係を意識し、一般的には理想的な座る姿勢が推奨されています。

仙腸関節は侵害受容器と呼ばれるセンサーがとても発達している関節で、二十数個もの痛みを感じるセンサーが存在します。そのためにわずかな負荷に対しても痛みを感じやすい特徴があります。

坐る姿勢のアンチテーゼ

ここまで読んで頂けたら、腰痛と椅子に座る事との関連性や、理想的な座る姿勢が推奨される理由はご理解頂けたかと思います。

人間工学に基づく【理想的な座る姿勢】は腰への負担を軽減する。その意見に私も基本的には同意見です。では、いったい何が問題なのか。なぜ【腰痛と椅子】の関係、【理想的な座る姿勢】のアンチテーゼを述べようとしているのか。

この先がテーゼに反旗を翻す、ドン・キホーテによるアンチテーゼです。

最悪な座る姿勢

以下は様子は、私がホームページの更新やデスクワークでとっている座る姿勢です。

ドン・キホーテのアンチテーゼドン・キホーテのアンチテーゼ2ドン・キホーテのアンチテーゼ3

腰痛を治療する立場の人間が、このような姿勢で座っている事に驚かれたでしょうか?

腰痛対策本やインターネット上の腰痛情報では悪い姿勢とされる見本のようですね。確かに、このような姿勢で座り続けることは最悪です。しかし、私は腰痛にはなっていません。

日常的に自分の腰をケアしているから?

いいえ違います。私は自分の腰のケアは殆どしません。

では、なぜでしょう?


それは、
私は椅子に座るとき、10分と同じ姿勢をとる事がないためです。私は座っているときコロコロ姿勢を変えます。これが椅子に座ったときに最も腰に負担をかけない事につながります。

人間工学上の理想的な座る姿勢について

腰痛と椅子との関係を考えたとき最も腰に負担がかかるのは【同一姿勢で座り続ける】事です。これは、人間工学上の理想的な座る姿勢であろうと例外ではありません。

同一姿勢で座り続けると、椎間板は潰れたままになりスポンジとして機能しなくなり、酸素と栄養補給に支障をきたします。骨盤は不安定な位置で固定され、仙腸関節の侵害受容器を刺激します。

また同一姿勢で座り続けることは同一の筋肉を使い続ける事になり、疲労し乳酸が蓄積します。こうなると筋肉は姿勢を維持するための十分な筋力を発揮できなくなり、硬くなる事で体を支えようとします。

これがコリを生み、長期化すると筋肉は硬縮・短縮して柔軟性を失います。そして、容易には解消できない腰痛が出来上がります。

一般的な腰痛情報に問題があるとすれば、この点に触れていない事です。そのため、多くの人は
【理想的な座る姿勢】で座り続けてしまいます。

あなたが今腰痛に悩んでいる。または、腰痛への不安があるのでしたら、いかに優れた腰に良い椅子であろうと、理想的な座る姿勢であろうと、同一姿勢で座り続けない事をお勧めします。

腰痛と椅子 / まとめ

私は自営業ですから上司も雇い主もいないので、写真のような座る姿勢をとる事が可能ですが。お勤めの方は傍からの目もあり、写真のような姿勢をとるのはなかなか難しいとは思います。

【腰痛と椅子】・【座る事と腰痛】を考えた場合、歩くことをお勧めします。歩くことも難しければ、せめて立ち上がりましょう。

歩くという行為は腰をニュートラルに戻してくれます。前後に脚を動かすことは座って固定されてしまった仙腸関節に対する最も良いエクササイズになります。また、ゆっくり歩くことはユラユラ椎間板を揺らす事になるので、スポンジとしての機能を回復します。


腰を疲労させない、血液循環を悪くさせない事を考えると
同一姿勢で座り続けるのは25分までとするのが良いでしょう。どんなに長くとも50分が限界です。それ以上の時間座り続けることを日常的に繰り返していると、リカバリーするのが難しくなります。

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※ただし、その方ご自身が特殊な鍼での施術を希望する場合のみ、特殊鍼の実費をご負担ください。こちらから無理にお勧めすることは一切ありませんのでご安心ください。

※施術中の写真で特殊鍼を使っているものもありますが、
原則的にはそれらの特殊鍼を使わず、追加の費用が発生しない形での対応としています
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