臀部の痛み 【鍼灸師が執筆・監修】
腰痛と関連しやすい臀部の痛みの原因と施術法について、鍼灸いちご治療院での鍼灸施術例を交え解説しています。
臀部には大臀筋、中殿筋、梨状筋というように複数の筋肉が存在します。また、お尻の痛みの原因は筋肉だけとは限りません。
臀部は腰の筋肉と密接な関係にあり、臀部の痛みを改善するためには腰の筋肉との関連性にも目を向ける必要があると鍼灸いちご治療院では考えています。
臀部の痛みだけでなく、腰痛や腰の重だるさ鈍痛なども伴っているようでしたら、筋肉や筋膜といった軟部組織の機能不全を原因として、生体力学上の運動連鎖に支障をきたしている可能性があると鍼灸いちご治療院では考え、痛みの改善に向けた鍼灸施術を行っています。
このページは以下の項目で構成しています。

このサイトは鍼灸いちご治療院が運営しています。
記事については医療系国家資格である鍼灸師の八幡太郎が執筆・編集・監修しています。
臀部に痛みを起こす原因はいくつか考えられますが、この項目では症状の発現エリアからどこに問題が起きているのかを、鍼灸いちご治療院の鍼灸師である八幡太郎が解説します。
一口にお尻の痛みと言っても、お尻にはいくつもの筋肉と靭帯が存在します。そのため障害されている部位次第で、症状が現れる部分に違いが生じることになります。
お尻の痛みを改善するために必要なことは、まず問題が起きている部位を明確にすることが第一歩になります。
お尻には狭いエリアに多くの種類の筋肉や靭帯が存在しています。
この中で比較的トラブルを起こしやすいのが、中臀筋、梨状筋、仙結節靭帯と呼ばれる構成要素になります。
中臀筋は@のエリアに症状が現れます。自覚症状ではさほど深い部分とは感じられません。
仙結節靭帯の症状は主に坐骨近くのAのエリアに症状が現れます。座っていると鈍痛や不快感があり、お尻を浮かせたくなる感じがします。
梨状筋ではBのエリアに症状が現れます。骨盤後ろのポコッとした骨の下方外側になります。自覚症状では、やや深くに感じられます。
他、小臀筋に問題が起きている場合には、@とBの中間位の位置で、かなり深い部分に鈍痛や不快感が生じ、股関節が痛むような感覚になります。
お尻に痛みが起きる原因は様々ですが、大きく分けて下記のような3つの原因が考えられます。
- 肉離れや打撲による外傷
- 椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの腰部の構造的な変形
- 腰と臀部の筋肉との連携に機能不全が起きた、運動連鎖上の問題
肉離れや打撲といった外傷による臀部の痛みは、痛み出したきっかけを本人が自覚していることが多く、損傷の程度が大きくなければ、治癒までの期間を安静に過ごしていれば、その後長期間に渡って痛みが続くといったことは通常ありません。
次に原因として考えられるのは、腰に構造的な変形が起きた結果として臀部に痛みが起きている場合です。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などで腰部に物理的変化が起き、変形によって臀部を支配している神経に圧迫や摩擦といった刺激が加わると、当該神経の影響下に痛みや痺れといった症状が現れます。

神経はそれぞれ特有の支配領域を持っていて、主にお尻に痛みの症状を起こすのは腰椎3番〜仙骨2番までの神経です。障害された神経次第で、色分けした図のように症状が起きる部位に違いがみられます。腰に変形が起きた場合、症状は臀部のみに止まらず、脚にも症状がみられる事が少なくありません。
ここまでに解説した、外傷や腰部の物理的変化が原因でお尻に痛みが起きている場合、原因が特定しやすい特徴があります。
外傷でしたら本人にその記憶がありますし、腰で起きた物理的変形はMRI、CT,X線といった画像診断装置で容易に原因を特定できます。そして、外傷では安静を旨としていれば概ね順調に治癒しますし、腰の物理的変形は手術によって障害を取り除けば改善に向かっていきます。
問題は、3番目に挙げた【腰の筋肉と臀部の筋肉との連携に機能不全が起きた、運動連鎖上の問題】が原因となっているお尻の痛みです。
機能不全が原因となっているお尻の痛みが厄介なのは、原因が筋肉や筋膜といった軟部組織の機能不全であるために、画像検査では異常を捉えられないためです。機能上の障害は画像には写りません。
あなたがお困りのお尻の痛みがどこは行っても治らず、画像検査などでも異常を発見できなかった場合は、腰とお尻の筋肉の運動連鎖が上手くいかず、機能不全を起こしているのかもしれません。
軟部組織の機能不全による臀部の痛みとはどのような状態を指すのか、何故そのような症状が起きるのか、臀部の痛みを改善するためには何が必要なのか。次の項目で解説します。
筋肉や筋膜、靭帯などの軟部組織に機能不全が起こるのは生体力学上の理由があります。お尻で問題が起きやすいのは中臀筋、梨状筋、仙結節靭帯といった構成要素になりますが、それぞれ問題が起きる背景に違いがあると鍼灸いちご治療院では考え、タイプ別の施術のアプローチを行っています。
お尻に痛みが起こる原因として、コンパートメント症候群という状態が起きている可能性もあります。コンパートメント症候群とは、1つ1つの区画(コンパートメント)に区分けされている筋肉に血流障害が起きている状態です。
筋肉は通常、筋膜と呼ばれるコラーゲンの膜に覆われています。筋肉と筋膜の関係を分かりやすい形に置き換えると、魚肉ソーセージとそれを包んでいるフィルムとの関係に似たような関係です。
魚肉ソーセージはフィルムが存在することで、内圧が高まりその形状を維持することが出来ます。筋肉と筋膜にもそれが当てはまり、筋膜の存在が筋肉内圧を高め、無駄なく張力を発揮させ易くしています。
ところが、筋膜の存在が裏目に出て、筋肉にダメージを与えてしまうことがあります。これがコンパートメント症候群です。
コンパートメント症候群は浅部よりも、深部の筋肉に起こりやすい特徴があります。
臀部は筋肉が何層にも重なっているため、下層の筋肉はその上に重なっている筋肉からの圧力を受けています。
周囲に存在する筋肉と、その筋肉自体の筋膜によって、深層の筋肉は高まる内圧を逃がせなくなります。
内圧が高まり過ぎた筋肉は血流障害が起こり、阻血性の痛みが起こります。
通常コンパートメント症候群は構造上、腰やふくらはぎに起こりやすいのですが、陸上競技のアスリートなどでは臀部にも起こることがあります。臀部の筋肉が発達していると、より圧力が高まりやすいためです。
コンパートメント症候群を治すためには、高まり過ぎた筋肉内圧を逃がすことがカギになります。
筋肉、筋膜、靭帯といった軟部組織に機能不全が起こる原因は取り上げた事だけではありませんが、一般的に問題が起こりやすい原因について、その背景を解説しました。
この項目では、前項で解説した【機能不全による臀部の痛み】3タイプの治療について、鍼灸いちご治療院での施術法を解説します。
お尻の痛みを治療する方法は鍼治療だけではありませんが、お尻の痛みは問題を起こしている個々の筋肉の問題だけではなく、共通してコンパートメント症候群としての側面も併せ持っています。
そのため、的確に筋肉内圧を逃がすことが出来る鍼治療が、最も効果的であると鍼灸いちご治療院では考えています。お尻の痛みを強めのマッサージで対処することはお勧めできません。
筋肉を包む筋膜は垂直方向からの強い圧力が掛ると、緊張度が増してしまう特徴を持っています。
表面を滑らせるような筋膜リリースというアプローチでしたら、そのような問題は起きてこないのですが…。
問題は、臀部や腰の筋肉は何層にも重なり厚みがあることです。通常でも臀部の筋肉は5〜6cmの厚さがあり、筋肉が発達した方や体格が大きな方では9cm以上の厚さがある方も存在します。
つまり臀部の深部に問題が起こっていて、マッサージでその筋肉にアプローチした場合、相当な圧力を加えなければ問題が起きている部位に効果が及ばないことになります。
ところが、そこまでの圧力を加えてしまうと、浅層の筋肉が緊張度を増してしまい、圧力を加えた直後はスッキリした感じがしますが、結果として元の木阿弥となってしまいます。
またそれだけでなく、強いマッサージを受け続けていると、身体はより強い圧力を求めるようになってしまいます。これが後に大きな問題となることがあります。
私の治療院にも『十年以上に渡り、腰と臀部に強いマッサージを受け続けてきた。』という方々が鍼治療を受けに来ますが、この方々の臀部にはかなりの確率で、筋膜の癒着が起こっています。
強い圧力を加え続けたために、筋膜が変性してしまい癒着と瘢痕化が起きてしまっている状態です。ここまでの状態になると、治るまでに年単位での時間を必要とします。
これが、お尻の痛みを強めのマッサージで対処するのを、鍼灸いちご治療院がお勧めしない理由です。
中臀筋の施術では、まず腰の左右側方に存在する腰方形筋にアプローチします。この筋肉が中殿筋と運動連鎖する関係にあるためです。
このような場合、鍼灸いちご治療院では2〜3寸(60〜90ミリ)の鍼を使用します。
次に患部である中臀筋にも鍼を刺入します。
こちらにも2〜3寸(60〜90ミリ)の長さの鍼を使用します。臀部は筋肉層が厚く、これくらいの鍼を使用しなければ深部に効果を及ぼしきれません。
身体に鍼を刺される事を考えると怖く思えるかもしれませんが、鍼を受けた方は共通して『そう、そこ! うぅ〜、効いてる。気持ち良い〜。』という声を漏らす方が多くみられます。
梨状筋の施術では、患部である梨状筋だけでなく、最深部の小臀筋、やや前方の大腿筋膜張筋にも同時に鍼を刺します。
こちらも中臀筋同様、最深部にまで効果を及ぼすために、2〜3寸(60〜90ミリ)の鍼を使用します。

次に下肢に視点を向けます。梨状筋に問題が起こっている場合には、脚にも症状が起きていることがあります。
その場合、脚にもキメ細かく鍼を刺し、症状を軽減していきます。
坐骨付近の仙結節靭帯に痛みや違和感がある場合には、腰の多裂筋と大腿裏面の筋肉が重要な鍼灸の施術ポイントとなります。
多裂筋には細めの鍼をキメ細かく刺していきます。
腰の筋肉は筋肉の厚さに個人差が大きく、短く細い鍼で十分足りる方も多く存在します。写真上で使用している鍼は、1寸2番と呼ばれ長さ30ミリ×太さ0.18ミリの鍼で、髪の毛と大差ない太さです。

そして、大腿二頭筋をメインとして太腿裏面の筋肉にも鍼を刺します。
仙結節靭帯の治療では腰と太腿の筋肉が綱引きをしている状態にありますから、この双方を緩める必要があります。
臀部の痛みを改善するための施術法は多岐に及びますが、それらのうちの1つ鍼灸でのアプローチ法を解説しました。ここから先は鍼灸いちご治療院に臀部の痛みを改善するためにお越しになり、実際に施術を受けられた方の手記を掲載します。
臀部の痛みは、腰の物理的変化で症状が起きていることもありますが、MRIやCTなどの画像検査でも原因がつかめないことがあります。
あなたのお尻の痛みの原因が、病院の検査でも発見できなかった場合、筋肉や筋膜、靭帯といった軟部組織の機能不全が原因かもしれません。軟部組織の機能不全は画像検査では発見出来ないためです。
なかなか改善しない臀部の痛みにお悩みでしたら、鍼灸いちご治療院へご相談ください。
周辺地図
鍼灸いちご治療院
〒133-0051 東京都江戸川区北小岩6-35-19
TEL.03-5876-8989


アクセス&駅からの道案内
電車の場合
JR総武線・小岩駅より徒歩15分
※各駅停車をご利用ください。快速線は停車しませんので、ご注意ください。
京成本線・京成小岩駅より徒歩3分
※普通または、快速列車しか停車しません。
JR小岩駅 / 京成小岩駅からは、【鍼灸いちご治療院までのルート案内】をご覧ください。
※駐車場はご用意しておりません。公共交通機関をご利用ください。
受付時間
鍼灸いちご治療院では完全予約制とさせて頂いております。
御予約の上、お越しください。
日曜日〜土曜日まで毎日施術しています。
受付時間 |
日 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
午後1:00〜20:00 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
※特別な事情がある場合の時間外の受付は御相談ください。
※12月31日、1月1日を除き祝祭日も施術しております。
費用について
◎初見料 2000円
◎施術費 6000円
- 初めてお越しの方は施術費用の他、初見料が必要になります。
- 追加の費用は一切必要ありません。
- 施術の費用につきましては現金のみでのお支払いになります。クレジットカードでの決済は出来ません。
※ただし、その方ご自身が特殊な鍼での施術を希望する場合のみ、特殊鍼の実費をご負担ください。こちらから無理にお勧めすることは一切ありませんのでご安心ください。
※施術中の写真で特殊鍼を使っているものもありますが、原則的にはそれらの特殊鍼を使わず、追加の費用が発生しない形での対応としています。
あなたをサポートします
鍼灸いちご治療院
東京都江戸川区北小岩6-35-19
03-5876-8989
↑ クリックで治療院案内へ
参考文献
- 腰痛診療ガイドライン 〈2012〉
日本整形外科学会/日本整形外科学会
日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・腰痛診療ガイドライン策定委員会 監修・編集
- 仙腸関節の痛み
仙台社会保険病院 腰痛・仙腸関節センター長 医師・村上栄一 著・監修
医学書院
- 非特異的腰痛のプライマリ・ケア
独立行政法人 国立病院機構 大阪南医療センター院長 米延策雄 監修・編集
公立学校法人 福島県立医科大学 学長兼理事長 菊北臣一 監修・編集
三輪書店