筋筋膜性腰痛症 【鍼灸師が執筆・監修】
このページでは、筋肉と筋膜が原因で痛みが起こる筋筋膜性腰痛症について、発症の原因、症状の特徴、効果的な治療法、予防・再発防止策について詳しく解説しています。
X線やCTなどの画像検査でも原因が特定できない場合、非特異的腰痛にも分類される筋筋膜性腰痛症の可能性があります。
筋肉が痛みを起こす原因やメカニズムを知り、それを基に的確な対策をとれば、あなたの腰痛の症状は軽減できます。
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記事については医療系国家資格である鍼灸師の八幡太郎が執筆・編集・監修しています。
筋・筋膜性腰痛は【きん・きんまくせいようつう】と読みます。結論から言うと、筋肉の疲労が原因になって筋膜や筋肉が痛みを起こしています。
筋肉とそれを覆う筋膜が痛みの原因になっているため、【 筋・筋膜性…】と呼びますが、この疾患は【 急性の痛み 】と【 慢性の痛み】に分類する必要があります。慢性と急性では、その原因と痛みに対する対応が異なるためです。
急に発症した腰の痛みを一般的に【 ぎっくり腰 】と呼びますが、筋肉が損傷を受けたことでも、激しい腰の痛みを発症します。
急激に発症した痛みでは、安静と冷却が基本となります。
急に起こった筋肉が原因での腰の痛みは、言ってみれば怪我・外傷です。筋筋膜性腰痛に含めるか迷うところですが、【筋肉】や【筋膜】が痛みを発症する元になっていることから、便宜上この項目で解説します。
判断の基準
『 ある日の、ある時から腰に痛みが起こった。』という場合、筋挫傷により腰に痛みを起こした可能性があります。肉離れ、筋断裂もほぼ同義語です。一般的には、断裂の程度が大きいものを筋断裂、損傷が比較的小さいものを肉離れと呼ぶこともあります。
筋肉が損傷を受けたことによる痛みなのか否かの判断の基準は、
【 いつから痛み出したのかはっきり分かっている。】か、それとも…
【 いつから痛み出したのか明確ではない。】のかを概ねの判断の基準として良いかと思います。
外傷による急な痛み
また、筋筋膜性腰痛とは別のカテゴリーになりますが、これら外傷に相当する腰の痛みには、他に腰椎捻挫があります。ラグビーなどの激しいコンタクトスポーツや、スキーやスノーボード、オートバイ事故などの時に発生します。
いずれにしても【 怪我 】、【 外傷 】ですから、慢性に経過している筋性の腰の痛みとは明確に区別する必要があります。治すための対処法も異なり、筋挫傷、筋断裂
(肉離れ)、腰椎捻挫では以下のような早期の対策が重要です。
筋挫傷・肉離れによる腰痛の対処法と予後
筋肉が急激に引き延ばされることで、その筋肉が負荷に耐えられない状態になると筋線維の一部、または全部が損傷します。
損傷の程度にもよりますが、受傷から48~72時間ほどの期間はアイシングと、安静が基本になります。
効果的なアイシング法については
【腰痛と湿布・薬】のページで解説しています。
筋挫傷では、急性期には患部に炎症が起きているため、早期の消炎鎮痛剤の服用が症状軽減に効果的です。筋線維が断裂していますから、どのような動作時にも痛みが起きます。
- 2~3日は積極的なアイシングと安静を要します。
- 急性期には、整体やカイロプラクティックは禁忌です。
- 3~5日経過し、痛みが軽減したらリハビリを開始します。患部を温め、軽めのストレッチで筋肉の硬縮を予防します。
- 損傷の程度にもよりますが、通常2~3週間程で完治します。
- 損傷の程度が酷い場合、手術で筋肉内の血腫を取り除く事もありますが、腰では稀です。
腰椎捻挫による腰痛の対処法と予後
腰椎捻挫とは腰椎と腰椎を繋ぐ靭帯が、外力などにより損傷した状態を指します。
関節本来が持つ生理的な可動範囲を超えて曲げられたり、過剰に引っ張られることで発症します。
筋挫傷・肉離れ同様に急性期にはアイシングが基本になりますが、それと併せコルセットで腰椎を固定・保護し、靭帯の損傷が拡大するのを防止する必要があります。
急性期の固定をせずに不完全な状態で治癒してしまうと、腰部を支える靭帯が病的に弛緩した状態になってしまう事もあり、そのような状態になると腰椎の安定性が低下するリスクがあり、再発を繰り返すことになりかねません。
- 受傷後2~3日ほどの期間、アイシング、安静、消炎鎮痛剤の内服が必要です。
- 急性期には、整体やカイロプラクティックは禁忌です。
- 痛みが続く期間はコルセットの着用が望ましいです。
- 損傷程度にもよりますが、通常3~6週間ほどで治癒します。
- 靭帯の損傷程度によっては、手術での再建が必要です。
- 急性期が過ぎ、回復期に入ったら軽度の運動でリハビリを開始します。
筋挫傷・肉離れなどの急性の筋筋膜性腰痛症や、腰椎捻挫といった外傷による腰の痛みには、急性期には早期のアイシングとコルセットの着用が推奨されます。
保存的に経過を観察していても、身体症状の改善がみられない場合には注意が必要です。そのような時は、出来るだけ早く整形外科などの医療機関を受診することが重要です。
また、筋肉を保護する意味でもテーピングが有効です。腰を痛めた時のテーピング法を
【腰痛のテーピング】のページで解説しています。痛みを軽減させるために参考にしてみてください。
通常、筋筋膜性腰痛症といった場合には、慢性に経過している腰の痛みを指すことが一般的です。
慢性的に筋肉が痛みを発する原因は、疲労による筋肉の硬縮があります。
腰の筋肉が硬くなるのは、デスクワークや車の運転といった腰に負担が掛る姿勢の継続、肉体労働やスポーツなど様々な日常生活上の原因が考えられますが、いずれにも共通しているのは筋肉の疲労と、それを背景とした血液の循環不全です。
筋筋膜性腰痛の日常生活上の原因
- 中腰姿勢の継続
- 座り続けのデスクワーク
- 腰を頻回に動かすことの継続
- スポーツでのオーバーユース
- 日常的な重量物の運搬
構造的な問題
腰の筋肉はその層がとても暑く、一番表層の多裂筋から最深部の大腰筋まで、女性でも7~9cm、筋肉量が豊富な男性では12~14cmに達する場合もあります。腰は、胸郭の肋骨のような骨性基盤が存在しないために、筋肉を発達させることで体幹部を支え二足歩行を可能にしています。
筋筋膜性腰痛はこの発達した筋肉が、裏目に出てしまうことが背景になっています。
腰や臀部の筋肉は幾層にも重なっているために、深い部分の筋肉は浅い層からの筋肉による圧迫で、血行障害が起こりやすい素地を持っています。そして、周囲からの圧力と筋膜が足かせとなり自分自身の内圧を逃がせなくなります。
そして、筋肉内圧が高まり過ぎると血管までが圧迫されることになり、血行障害で酸素や栄養が届かないため、筋線維が疲労し慢性的な筋筋膜性腰痛症を発症します。
生理学的問題
筋肉が原因となっている腰の痛みは、悪循環の負のスパイラルに陥っている状態です。
慢性に経過している腰の痛みを改善するには、この悪循環の連鎖をどこかで断ち切る必要があります。
筋筋膜性腰痛の 負のスパイラル
- 腰の筋肉が固くなると血管を圧迫するため、循環障害が起きます。
- そして、循環障害を基礎とした虚血性の痛みが起きます。
- 身体は痛みが起きると痛みから体を守るために、より筋肉を硬くする防御反射を起こします。
- 筋肉が更に硬くなったことで、血液循環は以前よりもっと悪くなる…。
- そして……
- …というような負のスパイラルが、慢性的に痛みが起きている腰の筋肉では起こっています。
腰の筋肉の痛みが慢性化してしまうメカニズムには、筋肉中の神経線維の問題もあります。
筋肉内にはC神経線維と呼ばれる神経が存在し、表面の筋膜にはAδ(エーデルタ)神経線維と呼ばれる神経線維が存在します。
C線維は鈍い痛みを感じ取り、Aδ線維は鋭い痛みを感じ取る神経です。
Aδ線維は筋挫傷(肉離れ)などの時に鋭い、刺されるような痛みを感じる伝達速度が速い神経です。反対にC線維は遅発性の鈍い痛みを感じる神経です。慢性的な筋筋膜性腰痛では、主にC線維の働きが問題になります。
C神経線維は皮膜で保護されておらず、むき出しの状態で筋肉中に存在します。そのため、循環不全で乳酸などの疲労物質が筋肉中にいつまでも止まった状態で維持されてしまうと、C神経線維は常に疲労物質に反応してしまい痛みを感じ続けることになります。
また、この神経線維は様々な発痛物質に反応するだけでなく、血流が低下した虚血状態では痛みに対する反応性が高くなる特徴を持っています。
このような神経線維の特徴も、悪循環による慢性化に関わっています。
腰の筋肉の構造や生理的な特徴については、
【腰の筋肉と腰痛の関係】のページで詳しく解説しています。
慢性の筋筋膜性腰痛の特徴
- 筋肉の柔軟性が低下するために、微細な損傷が起きやすく慢性化しやすい。
- レントゲンなどの画像検査では異常を発見できない。
- 痛みの要因が血行不良であり炎症性ではないため、消炎鎮痛剤が効きにくい。
- 温めると症状が軽減する。
筋肉が原因となる腰の痛みには、急性的に起こる外傷によるものと、慢性的な血行不良が原因となっているものに大別されます。
慢性、急性によっての対処が違うだけでなく、痛みを起こしている筋肉の種類によっても症状の出方や対策が異なります。次の項目で、タイプ別の症状の特徴などについて解説します。
整形外科などの医療機関での診断では、急性の場合にはMRIやエコー画像診断装置で画像上から筋肉の断裂の程度や、血腫の程度などを確認することがあります。
画像診断装置は他の重篤な疾患との鑑別に有用です。
慢性の筋筋膜性腰痛症では、レントゲン、MRIなどの画像診断装置では問題は発見できません。筋膜に癒着が生じている場合にはエコー画像診断装置で癒着を確認できます。
筋肉が痛みの原因であった場合、急性の筋挫傷などを除き整形外科の画像診断装置では問題を発見できないケースが多いですが、重篤な疾患との鑑別の必要があるため、画像診断装置が無意味であるわけではありません。
画像診断装置で問題を発見できない場合、問診や触診、神経学的な検査などを行い、他の疾患との鑑別診断がなされます。
確認される神経学的検査
- 下肢の知覚障害 ( 痺れ、触覚の麻痺 )
- 下肢の筋力低下
- 椎間板ヘルニアなどで見られる神経根症状の有無
上記のような神経学的な検査や、画像診断装置でも問題を発見できず、患者さんが筋肉の張りや凝り感を訴えているような場合、『 筋肉が原因の腰痛です。』というような診断が出されます。
症状
筋筋膜性腰痛症の症状は、腰の筋肉に過剰な負荷が掛ったり、無理に引き延ばされたりした時に生じる急性の症状と、筋肉の疲労により痛みが起きる、慢性の症状に大別されます。
急性の症状
- 急に発症した痛みで、痛みが強く動くのも困難になる
- 痛みの性質は鋭い痛み
- 患部の熱感、発赤、腫脹
- 冷やすと痛みが軽減する
慢性の症状
- 痛みが長期間続いているが動けない程ではない
- 痛みの質は鈍痛で、局在不明瞭
- 筋肉が固く、いつも重だるい感じがする
- 筋肉が張って凝り感を感じる
- 温めると痛みが軽減する
腰には役割が異なる沢山の筋肉が存在します。
筋肉の位置、長さ、深さなどの違いで、その筋肉を傷めた場合の症状の出方にも違いがあります。
筋肉のタイプ別の症状の違いを解説します。
腰で問題を起こしやすい筋肉は、多裂筋、脊柱起立筋、大腰筋、腰方形筋といった筋肉と、それを包んでいる胸腰筋膜です。
筋肉によって働きや、位置、大きさなどが異なるため、痛みが起きた時にも痛みの出方に違いがあります。また、対処法も異なり、原因に合わせた対応が必要になります。
多裂筋による症状
腰部の多裂筋は5つの筋肉の束からなり、主に腰椎を安定的に支えている筋肉です。
多裂筋が問題を起こすと、以下のような症状がみられます。
- 椅子に座っていると下部中央が痛む。
- 洗髪や洗顔など、前屈みになると痛む。
- 起床時に痛むが動いているうちに症状は少し楽になる。
- 歩き出そうとした「瞬間」、立ち上る「瞬間」、前屈姿勢から体を起こす「瞬間」に痛む。
多裂筋は、腰椎と仙骨の間においては最大の筋肉で、機能異常は腰椎5番と仙骨の間に好発します。動き出そうとする瞬間に痛む特徴があります。
多裂筋が問題を起こす原因や、対処法について
【多裂筋性腰痛】のページで詳しく解説しています。
脊柱起立筋による症状
脊柱起立筋はとても長い筋肉で、前屈姿勢から体を起こす動作の約80%までを担っています。
脊柱起立筋が問題を起こした場合、以下のような症状が現れます。
- 背中から腰までの広い範囲に張っている痛みがある。
- いつも腰にだるさや重さを感じる。
- 入浴などで温めると痛みが緩和する。
- 中腰で物を持ち上げると腰に刺し込むような痛みがある。
脊柱起立筋は、第1頚神経〜第5腰神経までの多数の神経に支配された非常に長い筋肉です。遅筋 (赤筋) の割合が多く、本来は疲労しにくい筋肉です。問題が起きた場合にはその長さゆえ、広い範囲に痛みの症状が現れます。
脊柱起立筋が問題を起こす原因や、対処法について
【脊柱起立筋の痛み】のページで詳しく解説しています。
大腰筋による症状
大腰筋は腰の最深部の筋肉です。長時間の座位は潜在的にこの腰痛のリスクをはらんでいます。
大腰筋が問題を起こした時のには、以下のような症状がみられます。
- 長時間座った姿勢から立ち上がるとしばらく腰が痛む。特にソファなど腰が深く沈む椅子でそれが顕著に現れる。
- 背中を伸ばしづらく。前屈は楽にできるが、後屈がつらい。
- 仰向寝では、寝具と腰の間に手を入れたりタオルを入れると楽になる。
- 仰向け寝よりも横向きに寝たくなる。
- 痛みの質は鈍痛で深い部分のような感覚。
- 痛む部分を自分自身でもはっきり指し示す事が難しい。
- くしゃみをすると、腰の深部にひびく。
大腰筋は腰の腰椎と太腿の大腿骨に付着しています。日常の中で最も大腰筋を縮ませ、問題を起こしやすいのは姿勢は座った姿勢を継続することです。
大腰筋が問題を起こす原因や、対処法などについて
【大腰筋性腰痛】のページで解説しています。
腰方形筋による症状
腰方形筋は、腰を固定した状態で上半身をひねる作業中に痛めやすい特徴があります。
腰方形筋が問題を起こした時のには、以下のような症状がみられます。
- 椅子など座った姿勢から立ち上る瞬間に痛む。
- 腰の真ん中よりも外側が痛む。
- くしゃみや強めの咳などで痛みが増す。
- わき腹から腰の中心部に向けて押すと痛む。
- 痛む側に体が傾いている事を指摘されることがある。
- 腰の高さやウエストがアンバランスになる。
腰方形筋は体幹を支えるだけでなく、強制呼気のとき呼吸補助筋としても働いています。筋肉上部が横隔膜に接しているため激しい咳やくしゃみなどで痛みが起きます。
腰方形筋が問題を起こす原因や、対処法について
【腰方形筋性腰痛】のページで解説しています。
胸腰筋膜による症状
胸腰筋膜は【結合組織の骨格】とも呼ばれ、胸郭から腰までの広い範囲で、体幹部を支えています。
胸腰筋膜が問題を起こすと以下のような症状になります。
- 腰から背中にかけて張っているような痛みがある。
- 腰にこわばりや、引きつるような感覚がある。
- 腰だけではなく臀部にも痛みや違和感がある。
- 腰にだるさや重さを感じる。
- 冷やすよりも温めた方が痛みが緩和する。(慢性)
- 温めるよりも冷やした方が痛みが緩和する。(急性)
- 仕事やスポーツで肉体を酷使している自覚がある。
物を持ち上げるとき、収縮した筋肉が膨張しすぎないように胸腰筋膜が押さえ込む事で支持力が増し、大きな力を発揮できています。
胸腰筋膜が痛みを起こす原因や、対処法について
【胸腰筋膜性腰痛】のページで詳しく解説しています。
一口に筋肉が原因の腰痛といっても、急性、慢性によっても痛みの出方に違いがあります。また、筋肉の種類によっても、痛みを起こす原因や症状が異なります。個人差に合わせた対応を心掛けることが、早期の症状軽減につながります。
また、痛みが長引いているようでしたら、自己判断は禁物です。胆嚢や膵臓といった内臓からの反射痛として鈍痛が続いていることもあるため、症状が改善しない場合には医療機関を受診する必要があります。
長引く腰の痛みで、痛みの局在が不明瞭な場合、内臓からの反射痛として症状が起きている事を時には疑う必要があります。
注意を要する疾患には、以下のようなものがあります。
注意を要する疾患
- 尿路結石
- 急性・慢性膵炎
- 胆石・胆嚢炎
- 子宮筋腫・子宮内膜症
- 腹部大動脈瘤・大動脈解離
- 悪性腫瘍
【内臓疾患と腰痛】のページで、それぞれの疾患による特徴的な症状などを解説しています。長期間に渡り腰痛の改善がみられず、上記に挙げた疾患の症状が思い当たるようでしたら、専門医への相談が必要です。
医療機関での筋筋膜性腰痛症の治療は、薬物療法、物理療法、運動療法などに分けられます。治療期間は損傷の程度によって異なります。
この疾患は
非特異的腰痛(※1)に分類され、
特異的腰痛(※2)である椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった腰に痛みを起こす疾患とは明確に区別する必要があります。
非特異的腰痛は機能性の腰痛であり、そのような手術を必要としない機能障害が原因となっている痛みの治療では、鍼灸治療などが効果的です。
病院では、痛みの激しい急性期には筋肉の炎症や、極度の緊張を緩和させるために薬が処方されることがあります。
処方される薬としては消炎鎮痛剤や湿布薬が主なものになります。
処方される薬の一例
- ロキソニン (内服):消炎鎮痛作用
- ボルタレン (内服):消炎鎮痛作用
- デパス (内服):筋弛緩作用
- 芍薬甘草湯 (内服):筋弛緩作用
- ロキソニンテープ (外用):消炎鎮痛作用
- モーラステープ (外用):消炎鎮痛作用
- ベンザダック (外用):消炎鎮痛作用 / 軟膏
- スプロフェン (外用):消炎鎮痛作用 / 軟膏
痛みの激しい急性期には、筋肉の炎症を抑える必要がありますが、長期間に渡り消炎鎮痛剤を使い続けるのは好ましくありません。
長期間に渡り消炎鎮痛剤を使い続けると血流障害を招き、治ることを阻害します。
身体に対し何らかの物理的な外力を与え、症状の緩和をはかる治療法を総称して物理療法と呼びます。
電気治療、温熱療法、光線療法、マッサージなど様々なアプローチ法が存在します。
電気治療
整形外科などでは、物理療法の一環として電気的な治療器を使用することがあります。
低周波、中周波、高周波、干渉波と電気的な特性の違いに合わせ、症状ごとに使い分けることがあります。
筋肉に電気を流すことで他動的に収縮と弛緩を繰り返し、筋肉中の発痛物質や疲労物質を押し流し、症状の軽減をはかります。
但し電気治療機器類は、比較的浅い筋肉層にまでしか効果が及びにくいデメリットがあります。これは、腰の筋肉層の厚さと電気治療器の周波数上の特性があるためです。
電気治療器が腰痛に効きにくい理由を
【低周波治療器が腰痛に効かない理由】のページで解説しています。
マッサージ
急性期の炎症が治まったら、緩めのマッサージで硬くなった筋肉をほぐす事も行われます。
回復期ではマッサージに併せ、ストレッチを行うと、硬縮や廃用萎縮を防止できます。
回復期、慢性期では凝っている筋肉をほぐしたくなる欲求から、しっかりマッサージしてもらいたくなるものですが、強めのマッサージは厳禁です。
筋肉を包んでいる筋膜は、垂直方向から強い圧力がかかると緊張度が増してしまう特性があります。また、繰り返し強めのマッサージを受け続けていると、筋膜が癒着してしまい、つらい症状が抜けにくい筋肉に変質してしまいます。
マッサージを受ける場合は、皮膚と筋肉を滑らせるような緩めのマッサージが望ましいです。
温熱療法
温熱療法には、赤外線治療器、ホットパック、パラフィン浴などがあります。また、古来からのお灸も温熱療法に含まれます。
筋肉を温めることで血行を改善し、痛みを起こす物質や老廃物を押し流し回復をはかります。
温熱療法では超音波による温熱効果が優れています。1MHz以下の周波数帯の超音波は筋肉の深層まで加温します。また、温熱効果だけでなく細胞レベルでのマイクロマッサージ効果もあります。
筋肉に対する物理療法機器の中では、超音波治療器は他の治療機器に比べ回復させる性能が優れています。
電気治療やマッサージでも症状が改善しない長引いている筋・筋膜性腰痛には、鍼治療が効果的です。
鍼治療は他のどんな保存療法よりもダイレクトに、ピンポイントで問題部位にアプローチすることが出来ます。
身体に鍼を刺されるという恐怖心から鍼治療は敬遠されがちですが、その効果には目を見張るものがあります。
鍼治療に使用される鍼は、髪の毛の太さとさほど変わらない極めて細い鍼が使われます。他の物理療法に比べ、的確に障害となっている患部の状態を改善するため、その効果が極めて長続きします。
鍼灸治療のメリットやデメリット、適応疾患について
【腰痛の鍼灸】のページで解説しています。
長引く筋筋膜性腰痛に苦しまれた患者さんが、鍼灸治療で症状が大きく改善した実例を、患者さんから頂戴した手記を交え紹介します。
内藤 雄一さん (42歳)
埼玉県さいたま市
主訴
腰・背中・臀部の鈍痛、睡眠障害、鉛を背負っているような全身の疲労感
内藤さんは5年程前から、背中・腰・臀部といった広い範囲に日常的に鈍痛が起きていました。鈍痛は日中活動時だけでなく、就寝中にも凝り感・ムズムズ感と併せて起こり、そのような状況から睡眠障害まで起こすようになってしまいました。
熟睡できない日々が続き、そのため疲れが抜けず全身に及ぶ倦怠感・疲労感を抱えるようになってしまいました。
これまでに整形外科、整骨院、カイロプラクティック、筋膜リリース、AKA博田法、鍼灸、マッサージ等の治療を受けてこられていますが、症状が大きく改善することはなく、当院に相談の電話を頂戴しました。
4年前と2年前に整形外科を受診されていて、X線写真、MRIによる画像診断を受けられていますが、器質的・構造的な問題は発見されていません。
全身の筋肉が張り詰めており、特に背部、腰部、臀部の筋肉は内圧が高まり過ぎた状態が長期間継続したため、硬く凝り固まっていました。神経学的な徒手検査や画像診断でも問題が発見できず、筋筋膜の機能不全が最も疑わしいため、鍼での治療開始となりました。
治療は腰・背部を中心に臀部にまで及びました。
使用した鍼は約80本ほどで、インナーマッスルにまでしっかり効かせる治療となりました。腰や臀部ではインナーの深い筋肉ほど問題を起こします。
インナーマッスルが問題を起こすと、筋膜というコラーゲンの膜で覆われていることと、周囲に存在する筋肉の影響で自分自身の内圧を逃がすことが出来なくなります。
この状態が長期化すると自力では改善困難な筋筋膜性の痛みが起こります。
内藤さんにはインナーマッスルにまでしっかり鍼を効かせる治療を、週に1回、5回ほど行いました。5年間改善することがなかった腰・背中・臀部の痛みはほぼ消失し、現在は定期的にメンテナンスすることで、良好な状態を維持しています。
以下は、内藤さんから頂戴した、発症から改善に至るまでの経過をまとめた手記です。スマートフォンで読みにくい場合は、手記の下に原文そのままに起こしたものを掲載しています。
私の腰痛は筋肉機能性異常によるもので、腰、臀部が疲労してくると足や背中まで凝りが広がり、体から鈍痛を発し、鉛を背負ったかの様に体が重くなり、一番つらかった事は就寝中に、鈍痛で眠れない中、仕事に行く為、寝不足から体の動きが重くなるなど、なった人でないと分からないと思いますが、大変つらい思いをしました。
通った病院、治療院などは整形外科から始まり、整体、都内でも有名な○○カイロプラクティック、その他有名な治療院など堂々めぐりをしましたが改善されず、人生の路頭に迷い悩んでいた中、八幡先生のホームページにたどり着き、わらをもすがる思いで治療を受けに行ったのを覚えています。
治療はきつく、初めての時はビックリしましたが、数回の治療で体も軽くなり、その後不快な症状に悩まされる事が無くなりました。そのおかげで仕事は勿論、趣味まで楽しめるようになりました。
先生の治療は、凝っている深部の筋肉にしっかり刺してくれます。そして不思議に思うのは、触診後に悪い箇所が立体的に見えているかの様に、あらゆる角度から治療してくれますので、鍼の響きが多く、受け手側からでも効果があるなと実感出来ます。
又、他治療院と違うところは、圧倒的に鍼の数、種類が多く、短期間で治してくれるところです。
八幡先生に出会えたご縁に感謝しつつ、今後とも宜しくお願いします。
内藤 雄一
胸郭は胸骨、肋骨によって支えられていますが、腰には腰椎の他には体幹部を支える骨性基盤が存在しません。
我々は骨性基盤がない状態で二足歩行で行動しているため、四足歩行時に比べ日常的に腰に過剰な負担を強いています。
予防や再発防止を考えた場合、この日常的にかかってくる
【 腰への負担に耐えられる腰を構築する 】という事が遠回りのようですが、根本的な解決につながります。
この項目では、予防・再発防止策として【 負担に耐えられる腰の筋力 】【 機能的に動く腰の筋肉 】【 柔軟な腰の筋肉 】この3つの要件を獲得するための運動療法について解説します。
日常的にストレッチする習慣がある人は、柔軟な筋肉を維持し続けているため腰痛になりづらい傾向があります。
筋肉にゆっくりとした適度な負荷をかけると、固まった筋線維が解け痛みを起こしにくくなります。
ストレッチを行うとその筋肉は、毛細血管断面積、1分当たり血流量が1.8~3倍に増加し、短縮した筋肉は平均25~30%柔軟性が向上します。
腰痛からの脱却には血流の改善がカギとなります。
【腰痛のストレッチ法】のページで、予防・再発防止に効果的な12のストレッチ法の解説をしています。
体幹筋力が十分な人に比べ、筋肉量が足りないと筋肉はより疲労しやすく、痛みを起こしやすくなります。
体幹に十分な筋肉量を獲得できれば、確実に腰痛脱却に近づきます。
体幹を支える筋肉ではグローバル筋である脊柱起立筋性と、ローカル筋の多裂筋が重要な筋肉です。
特に多裂筋は主な役割が脊椎を支えることであるため、トレーニングではこの筋肉が重要なカギとなります。
トレーニングジムなどでの筋トレも悪くはないのですが、【 わざわざジムまで出向く 】とういう事がネックになり、最初は心機一転取り組んでみても、そのうち自分に言い訳していかなくなってしまうものです。
筋トレは継続して初めて効果が望めるものですから、簡単で【~ながら】でも行える方法が長続きするコツです。
また、脊柱起立筋はマシントレーニングで筋肉量を増加させやすい筋肉ですが、腰痛を改善させるために必要な多裂筋はマシントレーニングでは鍛えにくい性質を持っています。
【腰痛の筋トレ】のページで、脊柱支持筋をトレーニングする方法、簡単にテレビを見ながら行える自重トレーニング法を解説しています。
体幹の筋肉量を増加させる事と並行して行いたいのが、こちらで紹介するフォームパッドを使用したトレーニング法です。
筋肉量を増加させただけでは【痛みを起こさない腰】、【機能的な腰】獲得するのは難しいものです。
それは、体幹筋力と神経システムの連携が構築されていないためです。
身体骨格は脊柱支持筋と神経システムの精緻なバランスで保たれています。
神経システムの機能性が低下すると、脊柱支持筋には不均衡な負荷が掛り続けることになり、その負担に耐えきれなくなったとき痛みを発症します。
日常生活の様々な場面で痛みを起こさないためには、神経システムと脊柱支持筋の連携性を向上させた【機能する腰】を獲得する必要があります。
【腰痛持ちのための体幹トレーニング法】のページで、フォームパッドを使用した、特殊なトレーニング法の解説をしています。
腰痛は安静期間を長くとる傾向がある人ほど、慢性化する傾向があります。
激しい痛みが無くなったら、出来るだけ早くリハビリを開始することが、結果として完治までの期間を短縮します。
リハビリ開始の目安は、痛みがあっても下記の日常生活動作 (ADL) が行えるか否かを基準にして良いかと思います。
日常生活動作 (ADL:activities of daily living)
激しい痛みによって、上記6つの日常生活動作を1人で行うことが困難であり、歩行も困難であるという状況にあるようでしたら、リハビリ開始のタイミングには早すぎます。
上記は急性期における対応であり、慢性的に痛みがある方はこの限りではなく、ストレッチ、筋肉トレーニングといったリハビリを早期に取り組むことが治癒への近道となります。
6つの日常生活動作も、1人で行うことに困難が生じるほどの急性の痛みが起きた人は、それらが出来るようになっても自己判断でのストレッチや筋肉トレーニングは好ましくありません。可能であれば、リハビリ室を備えた整形外科などの医療機関で、医師や理学療法士の指導のもとリハビリを行うのが望ましいです。
筋筋膜性腰痛症 / まとめ
筋筋膜性腰痛症を予防・再発させないためには、自分自身の意識改革が必要です。体幹トレーニングやストレッチを生活の中に取り入れるなどの他、以下のような事を心掛けると痛みが起きにくくなります。
- デスクワークなどで同一姿勢をとり続けない。1時間に一度は立ち上がり、体幹の筋肉のリラクゼーションをする。
- シャワーだけで済ませず、お湯につかり腰を芯まで温める。
- 出来るだけ歩くように心がける。
- 夏は冷房の風にあたらないように気をつけ、冬はカイロなどで腰を積極的に温める。
- 湿布やパップ剤に出来るだけ頼らないようにする。( 湿布・パップ剤は血行障害を招きます )
あなたが腰痛に正面から向き合いトレーニングやストレッチに取り組み、湿布薬の継続使用を中止し、きちんとした治療を受けるならば、あなたは1か月後には腰の事を忘れ、ほとんど腰に意識が向かなくなっているはずです。
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〒133-0051 東京都江戸川区北小岩6-35-19
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※駐車場はご用意しておりません。公共交通機関をご利用ください。
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※特別な事情がある場合の時間外の受付は御相談ください。
※12月31日、1月1日を除き祝祭日も施術しております。
費用について
◎初見料 2000円
◎施術費 6000円
- 初めてお越しの方は施術費用の他、初見料が必要になります。
- 追加の費用は一切必要ありません。
- 施術の費用につきましては現金のみでのお支払いになります。クレジットカードでの決済は出来ません。
※ただし、その方ご自身が特殊な鍼での施術を希望する場合のみ、特殊鍼の実費をご負担ください。こちらから無理にお勧めすることは一切ありませんのでご安心ください。
※施術中の写真で特殊鍼を使っているものもありますが、原則的にはそれらの特殊鍼を使わず、追加の費用が発生しない形での対応としています。
あなたをサポートします
鍼灸いちご治療院
東京都江戸川区北小岩6-35-19
03-5876-8989
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用語解説
※1 非特異的腰痛
レントゲン、CT、MRIといった画像診断装置でも原因を発見できず、血液検査などでも問題が見当たらない腰痛。全腰痛の85%が非特異的腰痛とされ、殆どの腰痛は機能不全が原因となっている。筋筋膜性腰痛は非特異的腰痛に分類される。
※2 特異的腰痛
画像診断装置や血液検査で、腰痛の原因が明確に特異的に発見できる腰痛。腰に痛みを起こしている人の15%が特異的腰痛とされます。
特異的腰痛の例
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎分離症、腰椎変性すべり症、腰椎圧迫骨折など。
参考文献
- 腰痛診療ガイドライン 〈2012〉
日本整形外科学会/日本整形外科学会
日本整形外科学会診療ガイドライン委員会・腰痛診療ガイドライン策定委員会 監修・編集
- 運動器疾患の治療 整形外科・現代鍼灸・伝統鍼灸
平澤 泰介・医学博士 京都府立医科大学名誉教授 著・監修
北出 利勝・医学博士 明治国際医療大学特任教授 著・監修
医歯薬出版株式会社
- 非特異的腰痛のプライマリ・ケア
独立行政法人 国立病院機構 大阪南医療センター院長 米延策雄 監修・編集
公立学校法人 福島県立医科大学 学長兼理事長 菊北臣一 監修・編集
三輪書店