胃潰瘍・十二指腸潰瘍と背中の痛み 鍼灸師が執筆・監修
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の症状の特徴や原因、治療法、再発防止策などについて解説しています。消化器潰瘍の多くは薬での治療で治りますが、まれに手術が必要なケースもあります。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍では多くの場合、上腹部に痛みや胸やけ、膨満感などの症状が起きますが、潰瘍ができた部位によっては背中にも痛みが起きることがあります。
以前は50代の男性や更年期の女性に好発しましたが、現在では若年層にも増えています。
お腹や背中に痛みが起きるのは、消化器潰瘍だけとは限らず、膵炎や胸膜炎、狭心症などでも起こります。
【背中の痛み】のページで、背中の痛みが起こりうる疾患を解説しています。
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記事については医療系国家資格である鍼灸師の八幡太郎が執筆・編集・監修しています。
上部消化器潰瘍では、多くの人がみぞおち付近の痛みと背中の痛みを訴えます。まれに潰瘍があっても上記のような症状ではなく、別の形で症状が現れることがあります。
急性・慢性膵炎でも似たような症状が起きることがあるため、鑑別が必要です。
胃潰瘍は通常、食後に痛みが増悪します。胃の中に入ってきた食物が潰瘍を刺激するためです。
胃潰瘍の症状
- みぞおち付近の痛みや胸やけ
- 食後に痛みが増悪する
- 背中の痛み
- 吐き気
- 腹部膨満感
- 食欲不振
- 悪化した場合、吐血
十二指腸潰瘍では、夜間就寝中や空腹時に痛みが増悪します。胃から流れてきた胃酸が潰瘍を刺激するためです。
十二指腸潰瘍の症状
- みぞおち付近の刺し込むような痛み
- 胸やけ、むかつき
- 腹部膨満感
- 背中の痛み
- 就寝中や空腹時に痛みが増悪する
- 食欲不振
- 悪化した場合、ドロドロしたコールタール様の便
自覚症状 |
胃潰瘍 |
十二指腸潰瘍 |
みぞおち付近の痛み
食後 |
33.1% |
16.3% |
みぞおち付近の痛み
夜間・空腹時 |
50.5% |
52.5% |
背中の痛み |
4.3% |
2.5% |
腹部膨満感 |
41.9% |
33.8% |
悪心 |
33.7% |
22.5% |
嘔吐 |
15.5% |
13.8% |
胸やけ |
34.7% |
16.3% |
呑酸 (げっぷ) |
11.6% |
7.5% |
食欲不振 |
42.2% |
27.5% |
吐血 |
0.6% |
ー |
下血 |
2.7% |
ー |
下痢 |
1.2% |
ー |
便秘 |
1.2% |
ー |
無症状 |
8.5% |
8.7% |
文献:日本消化器病学会 消化性潰瘍診療ガイドライン
胃潰瘍や十二指腸潰瘍では、背部に痛みが起きる確率は決して高いものではありません。
背部に痛みが起きた場合には、胃潰瘍では真ん中からやや左側、十二指腸潰瘍では右側に痛みが起きやすい傾向にあります。
上部消化器潰瘍では殆どの場合、心窩部 (みぞおち付近) に痛みの症状が現れます。
可能性としては、胃潰瘍では真ん中からやや左寄りに、十二指腸潰瘍ではやや右寄りに症状が現れる傾向があります。
胃潰瘍の症状は真ん中からやや左寄りに現れ、十二指腸潰瘍では、右寄りに症状が現れやすいのか?
これは潰瘍が起きる好発部位に偏りがあるためです。左右さが起きるのは、腹部でも背部でも、潰瘍ができた部位によっての事と考えられます。
胃潰瘍は、胃の小弯側の胃角部と呼ばれる部位に好発します。十二指腸潰瘍では、十二指腸球部と呼ばれる胃に近い部位に潰瘍が好発します。
これ以外の部位にも潰瘍は発生しないわけではなく、潰瘍ができた部位によって体表部に反射痛が起きる部位に違いが現れます。
インターネット上の情報でも、【胃潰瘍はこちら側…】、【十二指腸潰瘍ではこちらに症状が…】というように一定に定まっていないのは、潰瘍ができる部位に個人差があるためです。
『十二指腸は、胃よりも背中側にあるため、背中に痛みが起きやすい。』という情報もありますが、消化器学会によるデータによると背中の痛みは、胃潰瘍で4.3%、十二指腸潰瘍で2.5%と胃潰瘍の方が多い傾向があり、また総数も決して高頻度で発生している訳ではありません。
膵臓が炎症を起こした時にも、胃潰瘍や十二指腸潰瘍に似た症状が現れることがあります。
膵炎は前触れなく痛みが起きる事もありますが、揚げ物を食べた時やアルコールを飲んだ時に背中や腰に痛みが起きる傾向があります。
他、腹部膨満感や、嘔吐、食欲不振など、胃や十二指腸の不快な症状と似たような症状も現れます。
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【急性膵炎・慢性膵炎と腰や背中の痛み】のページで、膵臓が問題を起こした時の症状の特徴や、原因などについて解説しています。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因は、近年まで心理的ストレスや喫煙、過度な飲酒が原因と考えられてきましたが、現在では上部消化器潰瘍の原因のほとんどはピロリ菌によるものと考えられています。
ストレスや喫煙は増悪因子になりますが、直接的な原因となる訳ではありません。
日本での胃や十二指腸といった上部消化器潰瘍は、殆どの場合、ピロリ菌が原因になっています。他、薬での副作用や、肝硬変、慢性閉塞性肺疾患、副甲状腺機能亢進症、慢性腎不全などが原因になることもあります。
胃の中は空腹時には pH 1 〜1.5 という強酸状態にあります。通常、細菌が生息できる環境にはありません。
ピロリ菌は自分自身でアンモニアを合成し、胃酸を中和し生存を可能にしています。
このアンモニアやピロリ菌が持つ蛋白分解酵素が粘液を分解し、潰瘍を発生させると考えられています。
ピロリ菌は経口感染によって、胃の中に侵入します。衛生環境が改善した1990年代からは保菌者数が減少していますが、上下水道が普及していなかった時期に乳幼児期を過ごした50代では40%、70代では50%を超える人の胃の中に存在します。
また、胃癌発症者の80%にピロリ菌がみられ、ピロリ菌を除菌することで胃癌発症確率を25%にまで低下することが可能とされます。
消化性潰瘍は薬による副作用でも起こります。
上部消化器潰瘍の原因のうち薬剤によるものは、NSAIDsと呼ばれる非ステロイド系消炎鎮痛剤による副作用で発症しています。
痛み止めや解熱薬として一般的によく使用されている抗炎症・解熱鎮痛薬(NSAIDs)は、胃の粘膜の血流量が低下し、胃酸に対する抵抗力が低下するため消化性潰瘍を発症しやすくなります。病院で消炎鎮痛剤が処方されるとき、胃薬も併せて処方されるのはそのためです。
消炎鎮痛剤が原因となる消化器潰瘍は多いわけではありませんが、できる限り長期使用は控えるのが望ましいです。
消化器潰瘍の原因 |
胃潰瘍 |
十二指腸潰瘍 |
ピロリ菌 |
70% |
92% |
消炎鎮痛剤
NSAIDs |
25% |
5% |
その他
他臓器疾患の合併症など |
5% |
3% |
文献:日本消化器学会 消化性潰瘍診療ガイドライン
日常生活で身近にあるものが、消化性潰瘍潰瘍の増悪因子になります。これらは単独で潰瘍を起こすわけではありませんが、潰瘍を発症しやすくなります。そのため、出来るだけ避ける・控える対策をとると消化性潰瘍を発症しにくくなり、お腹や背中の痛みを起こしにくくなります。
ストレス
心理的・身体的ストレスが掛り続けた状態が継続すると、交感神経が緊張し、その反作用として胃酸の分泌が亢進し、消化性潰瘍を起こしやすくなります。
喫煙
煙草に含まれるタールは胃の内壁を強く刺激します。また、ニコチンの影響で胃の粘膜の血流量が低下し、粘膜が低酸素状態なります。結果として潰瘍が起きやすくなります。
カフェイン・アルコール
カフェインやアルコールは、胃酸の分泌を多く、早くする作用があります。あれた胃粘膜が胃酸で刺激されることが増悪することになります。
高脂肪食と食塩
高脂肪食と食塩を多く摂取する人ほど、ピロリ菌の感染率が高い傾向があります。
ピロリ菌が一番の原因ですから、近づけない対策が必要です。
香辛料
香辛料の使用量が増加すると、胃酸の分泌が亢進します。出過ぎた胃酸は胃の粘膜を荒れさせる原因になります。
問診で、腹部や背中の痛みの症状を確認したり、いくつかの検査を行い、胃や十二指腸の潰瘍の状態を確認した後診断され、治療法を選択することになります。
多くは薬物治療ですが、潰瘍の程度によっては内視鏡手術や開腹手術が行われます。
以前は、上部消化管の検査と言えばバリウムでの透視検査が主流でした。近年では、出来るだけ苦痛を生じない内視鏡も開発され、バリウム検査、内視鏡検査、両方の検査を受けることが推奨されています。
バリウム検査は、内視鏡検査よりも苦痛を感じにくいことがメリットです。
但し、胃液の分泌量が多い人では凹凸を検出しにくくなり、正確な検査結果が得られなくなることがあります。
近年、鼻腔から内視鏡を入れる経鼻内視鏡が開発され、内視鏡検査の苦痛が格段に低下しています。早期胃癌など小さな病変を発見できるメリットがあります。また、便秘症の人は検査後のバリウム排泄の苦痛がないことがメリットです。
内視鏡検査だった場合には組織サンプルを採取し、ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法などの方法でピロリ菌検査が行われます。バリウム検査だった場合、尿素呼気試験便中抗体測定などの方法でピロリ菌の存在の有無を確認します。
殆どの場合、胃酸の分泌を抑制したり、胃壁の防御能を高める薬での治療となります。
代表的な薬はH2ブロッカーです。他、プロスタグランジン製剤、抗コリン薬、プロトンポンプ阻害薬などが処方されます。
ピロリ菌の存在が確認された場合、ピロリ菌の除菌も行われます。通常、2種類の抗菌薬とプロトンポンプ阻害薬を7日間服用します。
除菌率90〜95%とされています。十分な除菌ができなかったときは再除菌となります。
通常は薬を服用することで治してますが、内科的に経過を観察しても治らない時には内視鏡での手術が検討されます。穿孔の程度が大きかったり、出血量が多いときには手術が行われる場合があります。
内視鏡での手術ではレーザーや高周波で止血する方法などが行われます。
また近年では殆ど行われなくなりましたが、緊急を要する場合などには回復手術が行われることがあります。
食事療法では、多量の出血がみられる場合などを除き、食事制限はあまり行われなくなっています。
但し、香辛料など刺激性のものは避け、出来るだけ胃を空にしないよう三食とるのが望ましいです。
消化性潰瘍の予防や再発防止では、特別な対応が必要なわけではなく、いわゆる健康的な生活を心掛けることが大切です。具体的には以下のような事に気を付けると、結果的に胃潰瘍・十二指腸潰瘍による腹部や背中の痛みの予防・再発防止に繋がります。
- 塩分を控えめにし、低脂肪食を心掛ける
- 空腹を避け、三食決まった時間に食事をとる
- 禁煙に努める
- ストレスをため込まない
- 十分な睡眠を心掛ける
- カフェインやアルコールを控えめにする
- 医師の指示に従い、自分の判断で治療を中止しない
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