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腰痛を治すために必要なこと。

鍼灸いちご治療院 TEL.03-5876-8989

〒133-0051 東京都江戸川区北小岩6-35-19


物語で知る、腰痛の治し方

腰痛の治し方

腰痛の治し方のポイントを、エンターテイメント形式で解説しています。

このサイトは腰痛の専門情報として、腰に関するあらゆる情報を網羅しています。

いま既に腰の痛みで切羽詰まっている方は
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このページでは腰痛を主役とする物語の形式をとり、腰に痛みが起こる大枠を解説しています。ストーリーの随所に、腰痛の治し方のキーポイントが挿入されています。読了される頃には、あなたの腰痛に対する考え方が大きく変わっているはずです。
目次

確執

腰痛軍評議会

腰痛軍将軍・脊柱管狭窄症
『今日、皆に集まってもらったのは他でもない、人類との腰をめぐる攻防戦についてだ。』

腰痛軍の重臣たちは、膠着する人類との戦いに疲弊して、皆押し黙っている。

将軍・脊柱管狭窄症
『我ら腰痛軍と人類の戦闘は、近代までは我らが優勢に戦いを進めてきた。しかし、現代においてはそれも膠着状態となったおる。予見可能な未来では、我ら腰痛軍の勢力圏が縮小する兆しすら見えてきておる。』

変形性脊椎症
『くそっ!人間どもMRIや神経ブロック注射なんて新兵器を開発しやがったからな。』

将軍・脊柱管狭窄症
『うむ、近代において人間が開発した兵器の数々は、我々腰痛軍には大きな脅威だ。』

腰部終盤障害
『俺たちが密かに仕掛けてきた罠が、奴らからは丸見えだ。どうすりゃ良いってんだ!』

人類が開発した各種の兵器への対応をめぐり、腰痛軍評議会は紛糾する。脊柱管狭窄症は瞼を閉じ、じっと皆の意見に耳を傾けている。一人静かに黙考している将軍・脊柱管狭窄症に気づいた者たちは口を閉じ、水を打ったように静けさを取り戻した。

将軍・脊柱管狭窄症
『私は、将軍の座に長く留まりすぎたようだ…。』

皆、脊柱管狭窄症の言葉の意味を理解していた。そして、次にどんな言葉が発せられるのかも分っていた。

将軍・脊柱管狭窄症
『私は今日、この場において将軍の職を辞するつもりだ。このことは、先ほど腰痛国王・腰椎変性すべり症陛下に謁見し、お許し頂いた。君たちの中から次期将軍を選出したい。皆の意見を聞かせ…。』

言葉を遮るように、椎間関節性腰痛がひと際大きな声で議場を制する。

参謀長・椎間関節性腰痛
『いやぁ閣下、大変お疲れさまでした。閣下が御老体に鞭打ち我が腰痛軍を陣頭指揮されている様子に、私は予てから閣下の御身体を心配致しておりました。将軍職をお辞めになる?それは良かった。はっはっは。』

変形性脊椎症
『くっ、椎間関節性腰痛のやつ。大した痛みも起こせないくせにデカい顔しやがって。』

腰部終盤障害
『しっ、やめておけ。聞こえるぞ。今や我が腰痛軍は、奴ら非特異的腰痛派が85%を占めてるんだ。』

参謀長・椎間関節性腰痛
『ん?何か雑音がすると思ったら、特異的腰痛の皆さん方ではありませんか。とっくに人間に制圧されていると思いましたよ。なにせ、あなた方発見されやすいから。はっはっは。』

変形性脊椎症
『言わせておけばっ!』

激昂し、殴りかかろうとする変形性脊椎症を、特異的腰痛派の数人が止める。

参謀長・椎間関節性腰痛
『貴様らのごとくMRIやX線で容易に発見されてしまう腰痛は、我が腰痛軍には足手まといなんだよ!そうお思いになりませんか?閣下。』

怒りに身を震わせ、静かに答える脊柱管狭窄症

将軍・脊柱管狭窄症
『言葉が過ぎるのではないかな。椎間関節性腰痛君。』

参謀長・椎間関節性腰痛
『おっと失礼。そういえば閣下は、特異的腰痛の伝説的な存在でしたな。…といっても、それももはや過去の話。人間どもが侵襲性の低い手術を開発しましたからな。ほんの数日の入院期間で人間が痛みから解放されてしまうようでは、引退を選択されたのは賢明でしたな。』

椎間関節性腰痛は口元に笑みを浮かべる。若き腰痛国王に巧みに取り入り、政敵・脊柱管狭窄症を将軍の座から引きずり下ろす工作を進め、椎間関節性腰痛の目論見どおりに事が運んでいく。

変形性脊椎症
『椎間関節性腰痛!貴様が国王陛下に取り入り、閣下を追い落とす裏工作をしていたのは、私の部下からも報告が上がっているぞ!汚いやつめ!』

参謀長・椎間関節性腰痛
『さて、何のことか…。今般のことは陛下の御意思である。御年若いとはいえ、国王陛下は大変ご聡明であらせられる。それを、裏工作の、追い落とすのと、不敬であろう。』

変形性脊椎症
『ぐっ。』

いきり立つ特異的腰痛派を前に、諭すように将軍・脊柱管狭窄症は力なく口を開く。

将軍・脊柱管狭窄症
『もう良い。全て、私の力不足だ。…すまぬ。』

腰部終盤障害
『しかし、閣下…。如何に侵襲性の低い術式が広まっているとはいえ、閣下が本気を出して馬尾神経に癒着を起こせば、人間にはもはや手も足も出ず、苦しみ続けるしかないではありませんか。』

将軍・脊柱管狭窄症
『それとて、人間にとっての待望の鎮痛薬リリカで、相当程度コントロールされてしまう。』

腰部終盤障害
『でも閣下、リリカは高度な足のむくみなどの副作用があり、それに…。』

脊柱管狭窄症は腰部終盤障害の言葉を手で制す。

将軍・脊柱管狭窄症
『君の広範な知識にはいつも助けられたな。礼を申す。でも、もう良いのだ。時代は変わった。』

参謀長・椎間関節性腰痛
『お涙頂戴の芝居はそれ位にして…。早速、時期将軍の選出を願えますかな閣下。新将軍の選出と、陛下への上奏の権限はあなたにしかない。評議会の【力関係】をご理解の上、迅速な選出をお願いしたい。』

腰痛軍次期将軍は非特異的腰痛派の中から、そして自分が選出されるのが既定の路線であると言わんがばかりの椎間関節性腰痛の態度に、調子づいた非特異的腰痛派の席からは、脊柱管狭窄症に対する野次や怒号が飛ぶ。派閥間の確執はもはや修復不可能な状態であった。

将軍・脊柱管狭窄症
『1人で考える時間をもらいたい。少しの間、退席する。』

短く言い残して、脊柱管狭窄症は1人別室に向かった。

断崖

小さな部屋で、脊柱管狭窄症は苦渋の決断を迫られていた。特異的腰痛派、非特異的腰痛派、誰を次期将軍に推しても、混乱は避けられそうもない。

かつて特異的腰痛派は、人類との戦いにおいて主役の座を務めてきた。椎間板ヘルニアなどのスタープレーヤーも数多く輩出している。

特異的腰痛派の疾患たちは激しい痛みを起こす戦術をとり、人類を長きに渡って苦しめてきた。しかし、画像検査で容易に発見されてしまうため、人類側に付け入る隙を与えてしまうのだ。

そのため現代では見えない腰痛である非特異的腰痛が、人類を苦しめる腰痛の主役に躍り出てきている。腰をめぐる攻防戦では、非特異的腰痛が85%を占めるまでに至っている。

腰痛は、特異的腰痛と非特異的腰痛を完全に切り離すことなどできない。ある一線からが特異的腰痛で、ある一線を越えたら非特異的腰痛などということは断じてあり得ない。

特異的腰痛と非特異的腰痛が混然一体となり、それぞれの得意分野で痛みを起こすことで人間たちと戦ってきたのではなかったのか?

しかし、それは望むべくのないことだ。今となっては、腰痛軍の多くの権限は非特異的腰痛派に握られている。共に戦うなどということは、ほとんど不可能なことに思えた。

脊柱管狭窄症は腰痛国の行く末を憂いていた。このまま腰痛軍の中で派閥間の対立が続けば、いずれ国は二分されるであろう。しかし、椎間関節性腰痛に腰痛軍を託すわけにはいかない。自らの利益のためなら、どんな相手にでもすり寄る。そういう腰痛だ。

椎間関節性腰痛が腰痛軍の全権を掌握したら自らの安全だけを確保し、全ての腰痛を裏切り、腰痛の治し方や弱点の情報を人間側に売り渡しかねない。

将軍・脊柱管狭窄症
『ふうー。』

脊柱管狭窄症は深くため息をつき、事ここに至るまでに派閥の枠を超えた、次世代腰痛軍のリーダーを育ててこなかったことを悔いた。

時は猶予を許す状況にない。人間達は次々と新しい戦略で、我々に戦いを挑んでくるであろう。自分が将軍の座にとどまり、それを向かい打つことはもはや許されない。

将軍・脊柱管狭窄症
『将に相応しい腰痛は誰か…。』

将軍職を託すに足る数名の指揮官をリストアップし、一人ひとり検討してみる。

将軍・脊柱管狭窄症
『椎間板ヘルニア、彼ならどうだろう。』

椎間板ヘルニアの名は人間側にも轟いている。威圧感を与えるには十分な存在だ。戦いを起こした時の痛みも激しく、脚にまで戦線を拡大する戦略は見事なものだ。

しかしだ、激しい痛みを起こす髄核の脱出が大きければ大きいほど、自滅の道をたどる事もある。いわゆる自然退縮だ。また、戦いの対象となるのが、活動性の高い若い男性に偏っているのもマイナスポイントだ。

それに人間側は対椎間板ヘルニア兵器として、内視鏡手術も投入してきている。この兵器を使用されると、髄核脱出の部位にもよるが日帰り手術で治癒してしまう。

腰痛軍の中では最もメジャーなスーパースターだが、軍をまとめる器量ではない。やはりプレーヤーだ。脊柱管狭窄症は椎間板ヘルニアを候補から外した。

将軍・脊柱管狭窄症
『では、仙腸関節性腰痛はどうだ。』

非特異的腰痛派の腰痛だが、その手腕は見事なものだ。見どころのある腰痛として目をかけていた。

見えない腰痛の代表格だ。忍者のように姿を隠し、近年まで整形外科医ですらその存在に気づかなかった。静かに腰に侵入し、罠を仕掛ける戦法は人間を翻弄する。

ただ問題があるのは、それを見抜く人間には容易く仕留められてしまうことだ。AKA博田法、SOTテクニック、関節モビリゼーションなどの戦術を人間にとられてしまうと、ひとたまりもない。

そのようなマイナスを考慮しても、痛みの症状も激しく、ぎっくり腰として人間を身動きすら出来なくさせてきた功績は無視できない。捨て置くのは惜しい腰痛だ。

一つ気掛かりなのは、同じ関節性の腰痛として椎間関節性腰痛の直属の部下であることだ。指揮官としての経験の浅い仙腸関節性腰痛では、老獪な椎間関節性腰痛に容易に傀儡とされてしまう可能性が高い。

将軍・脊柱管狭窄症
『やはり、仙腸関節性腰痛はないな。ぎっくり腰を起こす戦い方は見事なんだが。背後の椎間関節性腰痛の存在が危険だ。』

脊柱管狭窄症はリスト上の仙腸関節性腰痛の名を消した。

非特異的腰痛派から選出しようとすると、常に椎間関節性腰痛の存在がネックとなる。といって特異的腰痛派から選出したのでは、非特異的腰痛派のクーデターを招きかねない。

難題を前に答えが出せず、ため息ばかりが重なる。

いっその事、線維筋痛症や、脊髄腫瘍、強直性脊椎炎ではどうか。彼らなら特異的腰痛派、非特異的腰痛派のいずれにも属していない。痛みを起こす戦局の乗り切りも巧みだ。

派閥の枠を超えた名案に思えたが、脊柱管狭窄症はその考えを打ち消した。

将軍・脊柱管狭窄症
『いや、この考えはないな。彼らは腰痛とは呼べない別の疾患だ。たまたま腰痛としての症状を起こしているだけだ。』

腰痛軍には、人間との膠着した戦局を乗り切るため、他の省庁から招聘した疾患も存在する。しかし彼らは生え抜きではないだけに、腰が据わっていない。それぞれの出身省庁からの命令があれば、腰以外の部位に痛みを起こす。やはり彼らには腰痛軍トップは任せられない。

将軍・脊柱管狭窄症
『次期将軍に誰を据えても争いは避けられない。緊急動議発動で流会させるしかない。』

断崖に追い詰められた脊柱管狭窄症の頭の片隅に、危険な考えが浮かんでいた。

脊柱管狭窄症
『陛下の弟君を擁立し、今上陛下には御退位願う?…いや、まさかな。』

不安

筋筋膜性腰痛は前線の真っただ中で、部下から戦況の報告を聞いていた。彼の部隊は、人間との戦いを常に優勢に進めていた。部隊の筋肉誰もが一騎当千の強者ばかりだ。末端に至るまで規律の乱れもなく、それぞれが果敢に戦い人間に痛みを起こしている。

評議会への招聘の知らせは届いていたが、一顧だにせずに無視を決め込んだ。部下の一人に部隊を任せ、評議会に赴くことには何の支障もなかったが、共に死線を越えてきた筋肉たちを残し、権力争いに明け暮れる気持ちにはなれなかった。

異変があれば、他の将官たちから連絡が入るであろう。このような態度が派閥の領袖たる椎間関節性腰痛に快く思われていないのは知っている。しかし、腰痛軍における戦果は誰よりも挙げてきたと自負している。その自負心が権力者におもねることを良しとはさせなかった。

狡猾な椎間関節性腰痛の顔と評議会に思いを馳せると、軍内部の益のない派閥争いに辟易するが、筋筋膜性腰痛は気持ちを取り直して部下からの戦況の報告に耳を傾けた。

多裂筋性腰痛
『…における戦況は先般の報告と変わらず、我が軍優位に展開しております。デスクワーク戦では、人間の不良姿勢と同一姿勢の継続で、私の多裂筋部隊と腹横筋部隊が機能を低下させ持久戦に持ち込んでおります。さらに、大腰筋部隊が戦線前方から短縮形態となる援護射撃を行い、長期間に渡り局在不明瞭な痛みを継続的に起こしております。』

筋筋膜性腰痛
『そうか大腰筋部隊が援護しているようなら、デスクワーク方面の戦闘は安心していられるな。』

多裂筋性腰痛
『彼の部隊は重量級ぞろいですから。大腰筋の援護があると、私の部隊も戦闘の展開をスムーズに行うことが出来ます。それに比べると私の部下の筋束たちは小物ばかりで、華々しい戦果をあげられずお恥ずかしい限りです。』

筋筋膜性腰痛
『ふっ、謙遜することはあるまい。君の部隊の働きなくば、そもそも腰痛軍は人間との戦いを進めることが出来ない。』

筋筋膜性腰痛は、控えめだが実直で確実に痛みを起こす多裂筋に全幅の信頼を置いていた。多裂筋の存在しない腰痛など考えもつかない。

多裂筋は大腰筋や脊柱起立筋のようなスタープレーヤーではない。脊椎支持筋として裏方に徹している。普段は目立たず地味な存在だが、ひとたび痛みを起こすとその粘り強い戦闘において、人間を長く苦しめる。

多裂筋は部下を小物と謙遜するが、この小さな筋束たちがくせ者だ。センシティブな痛みの起こし方では、非特異的腰痛の親玉でもある短気な椎間関節性腰痛の3倍もの敏感さだ。小さな筋束の寄り合い所帯ゆえの特徴を活かした、見事な戦い方をする。

多裂筋が友軍ではなく敵の軍勢であったらと思うと、背筋に冷たいものが走る思いで言葉少なに報告を促した。

筋筋膜性腰痛
『他の部隊は。』

多裂筋性腰痛
『他の部隊も人間との戦闘を概ね優位に進めております。スポーツ戦では、ゴルフ、テニスなどにおいて、腰方形筋が確実に痛みを起こしています。この戦局においては臀部大隊から中殿筋が応援に入り、短縮形態をとることで腰方形筋部隊を援護しております。』

筋筋膜性腰痛
『脊柱起立筋や胸腰筋膜の部隊は?』

多裂筋性腰痛
『胸腰筋膜部隊はインナーマッスル、アウターマッスル問わず、幅広く戦線を拡大しております。脊柱起立筋部隊においては、重労働戦線で目覚ましい戦果をあげております。』

自身の統括する腰痛軍筋性師団において、どの部隊もが対人間戦で優位に戦闘を展開している報告に、筋筋膜性腰痛は満足した。

筋筋膜性腰痛
『敵軍の反撃に変わりはないか?』

多裂筋性腰痛
『はっ。今のところ人間たちの反撃に変化はみられません。相も変わらず湿布地雷の敷設と鎮痛剤での砲撃に終始しております。』

筋筋膜性腰痛
『愚かな。その戦術が自分たちの首を絞めていることに気づかぬとは。』

人間たちのとる戦術に安堵した。戦局は当面の間、腰痛軍が有利であることに変わりはないだろう。人間の多くは表面的な反撃しかしてこない。湿布や鎮痛剤は確かに痛みを抑えるが、所詮対症療法に過ぎず、腰を治すことには何ら寄与しない。

湿布や鎮痛剤は痛みを抑えるということに限るならば、優秀な兵器だ。これを使用されては腰痛軍とて一時的に退却せざるを得ない。しかし、その効果は一時的であるだけでなく、長期間の継続使用は血流障害という弊害をもたらす。

【自分たちの首を絞める】とはこのことだ。血流障害は腰痛との戦いにおいて最も避けねばならぬ事態だ。これに気づかぬ限り人間は、腰痛との戦いにおいて、抜け出すことが出来ない泥沼に自ら足を踏み入れていくことになる。

湿布や鎮痛剤が対腰痛兵器として全く役に立たないということではない。問題はどのような局面において使用すべき兵器であるか、ということだ。多くの人間は目の前に存在する痛みに目を奪われ、大局を見誤る。

考えねばならぬことは、なぜ痛みが起きているのかだ。この問題を考えず、湿布や鎮痛剤を使用することに終始している限り、人間側に勝利はない。

将軍・脊柱管狭窄症率いる特異的腰痛派は、戦況によっては苦戦を強いられる事もあるが、筋筋膜性腰痛に代表される非特異的腰痛派は、対人間戦において概ね優位に戦闘を展開している。非特異的腰痛派が85%占める現状では、当面は腰痛軍が多くの局面で勝利するだろう。

しかし、筋筋膜性腰痛は一抹の不安を感じていた。頭の片隅で危険信号が鳴っている。人間の極一部ではあるが、腰痛の本質に気づき始めたと思わせる行動をとる者がいるという報告も入ってきている。

筋筋膜性腰痛
『人間との戦いは、新たな局面を迎えるかもしれないな。』

筋筋膜性腰痛は執務室の窓から、遠く離れた脚部の山並みの稜線に視線を向けた。

協力

腓腹筋
『兄貴〜。よう、兄貴よう〜。もうこんなトコで良いんじゃねえのか?』

ヒラメ筋
『どれ?なんだよ、まだおめぇ硬くなってねえじゃねぇか。』

腓腹筋
『だってよう、内股歩きとかつま先を外開きにして歩くのは、もう疲れちまったよ。それに俺たちは脚の筋肉だぜ?コンパートメント症候群起こしてりゃ良いんじゃねえのか?』

ヒラメ筋
『なに寝言言ってやがる。腰痛軍の旦那に、前払いでたっぷり報酬もらったじゃねえか。義理は果たさなきゃなんねえんだよ。』

腓腹筋
『したっけ兄貴よう。なんで俺たち脚の筋肉が腰痛と関連するんだよ。山向こうのスネの前脛骨筋もいい加減疲れたってボヤいてたぜ。』

ヒラメ筋
『俺も難しいことは解らねえが、腰の筋肉の旦那の話じゃ、連鎖がどうとか、アライ何とかがどうとかで腰に痛みが起きるんだってよ。』

腓腹筋
『ふ〜ん。天下の腰痛軍に協力してくれって頭下げられりゃ、そりゃあ協力するのはやぶさかじゃねえけどよ。慣れない歩き方はホント疲れるぜ?』

ヒラメ筋
『さあ、もうひと踏ん張りだ。おまえの内股歩き、なかなか様になってきたぜ?それに、俺たちがおかしな歩き方をするようになってから、腰の山と谷の形が変わってきたと思わねえか?』

ヒラメ筋と腓腹筋は、遥か彼方にそびえる臀部山の頂と、それに続く腰渓谷を眺めた。身体の運動連鎖などには理解が及ばないが、何かが大きく動き出そうとしている予感を感じていた。



筋筋膜性腰痛が秘密裏に脚国下腿州知事であるコンパートメント症候群を訪れたのは、流会した評議会の直後であった。

腰と脚とは仙腸関節を国境にした、それぞれ独立した主権国家だ。対等な同盟関係にあり互いに協力体制をとることが多い。しかし脚国は腰部を凌ぐ大国だ。如何に影響力が大きい腰痛軍といえど、協力を願い出る立場にすぎない。

脚は国家の形態として、腰痛国のような立憲君主制の国ではなく、大腿部、下腿部、足部といった3つの州に分かれた連邦制をとっている。

脚の筋肉では太腿の筋肉群が大きな権勢を誇っているが、強大であるだけに腰痛軍への協力を取り付けるのは容易なことではない。そこで筋筋膜性腰痛は太腿高原の先、膝の谷を越えた下腿の筋肉たちに目を付けた。

脚国の主流派である大腿部から見れば、飛び越し外交ということになりメンツをつぶされた形になる。如何に下腿州が独自の自治権を持つとはいえ、事は慎重に進めねばならなかった。

デリケートな交渉を必要とするが、時は急がれた。評議会は大混乱のうちに流会した。追い詰められた将軍・脊柱管狭窄症を擁する特異的腰痛派による不穏な動きもある。このままでは人間との戦いどころではない。腰痛国は国を二分する内乱の危機に直面していた。


筋筋膜性腰痛
『先ずは、このような会見の場を設けて頂き知事には感謝いたします。』

下腿州知事 / コンパートメント症候群
『遠路良くお越しなされた。まあまあ堅い挨拶は抜きに、先ずは一献。』

会見には酒席が用意されていた。普段酒を嗜まない筋筋膜性腰痛には強い酒であったが、礼を欠くことないよう盃の酒を一気に飲み干した。その様子を見てコンパートメント症候群は静かに頷き満足した。

下腿州知事 / コンパートメント症候群
『さすが腰痛軍中将閣下だ。会見前にあなたのことは調べさせて頂いた。報告には閣下は酒を嗜まれないとあったが、なかなかどうして、良い飲みっぷりだ。』

筋筋膜性腰痛
『ご存知でしたか知事。お人が悪い。はっはっは。』

下腿州知事 / コンパートメント症候群
『いやぁ、試すようなことをして申し訳ない。あなたの器量を見させて頂いた。なかなかどうして胆の座った男のようだ。』

筋筋膜性腰痛は季節的な体の変調など時候の話を簡単にした後、早速下腿州知事を訪れた理由を切り出した。

筋筋膜性腰痛
『知事、早速ですが用件をお話しします。我が腰痛軍は今、危機的な状況にあります。知事の配下の下腿の筋肉に、腰痛軍への協力を仰ぎたいのです。』

下腿州知事 / コンパートメント症候群
『ほう、それをまたどうして私に。あなたの国と国境を接している大腿州の方が、力も強く影響力も大きいはずだが。』

この男には駆け引きは通じない。そう判断した筋筋膜性腰痛は、率直に思うところを述べた。

筋筋膜性腰痛
『大腿州の影響力は確かに大きい。筋肉量では我々の支配地域の腰を遥かに凌いでいます。大腿州は州というよりもはや国です。これだけ強大な力を持っている相手では、協力を取り付けるのも容易ではありません。しかし…』

下腿州知事 / コンパートメント症候群
『しかし、力の小さな下腿の筋肉になら協力を仰ぎやすい。と?』

筋筋膜性腰痛
『いや知事、そういう訳ではありませんが…。』

下腿州知事 / コンパートメント症候群
『はっはっは、閣下あなたは嘘がつけない方のようですな。よろしい、協力しましょう。坐骨神経痛の時には腰痛軍に協力して頂いた。閣下から会見の申し出があったときから、お受けするつもりでいましたよ。』

筋筋膜性腰痛
『はっ。感謝いたします。』

筋筋膜性腰痛は酒席のテーブルに頭を擦り付けんばかりに首を垂れた。

下腿州知事 / コンパートメント症候群
『下腿の筋肉に影響力が大きい、ヒラメ筋を案内につけましょう。彼に協力を求めると良いでしょう。では、健闘を祈りますよ閣下。』

力強い握手を交わした後、コンパートメント症候群は席を後にした。


筋筋膜性腰痛はヒラメ筋の案内に従い下腿の山間部を視察した。視察の途中、合い間を見つけては下腿の筋肉たちに協力を求めて回った。ヒラメ筋の同席もあって、ふくらはぎ、むこう脛どの筋肉からも腰痛軍への協力を惜しまないという色よい返事を得ることが出来た。

筋筋膜性腰痛
『ヒラメ筋さん、感謝します。こんなにスムーズに交渉が進んでいるのも、あなたのおかげです。それにしても、下腿の筋肉の皆さん方の連携は素晴らしい。大腿州にも、脚国最末端の足部州にも、精緻な影響を及ぼしているではないですか。』

ヒラメ筋
『いやぁ、それほどのことはねぇですがね。私らの州は足部と大腿部に挟まれていますからね。どちらとも丁丁発止でやらないと、生き残れないんですわ。』

筋筋膜性腰痛
『驚いた。想像以上だ。これなら、考えていた作戦が見事に決まるはずだ!ヒラメ筋さん、どうか下腿の筋肉さんたちの取りまとめを、よろしくお願いします!』

筋筋膜性腰痛はヒラメ筋の手を取り固く握りしめた。そして、興奮冷めやらぬまま作戦の詳細をヒラメ筋に熱く説明した。

火蓋

将軍・脊柱管狭窄症による緊急動議発動により評議会が流会したため、腰痛国憲法の規定に従い腰痛国王の名のもとに緊急議会が招集された。これには腰に痛みを起こしうるあらゆる疾患を包含した議員団、腰痛軍の将官以上の全ての軍人が出席しなければならない。

早めに到着した筋筋膜性腰痛は腰痛軍の議席から、もう間もなく到着するであろう主を待つ議会最上段の玉座を眺めていた。

椎間関節性腰痛
『おや、お見掛けしない顔だが、ここは腰痛軍の議席とお分かりか?』

たっぷりの皮肉を込めた椎間関節性腰痛の言葉に、筋筋膜性腰痛は苦虫をかみつぶす思いで軽く頭を下げた。

椎間関節性腰痛
『もう間もなく私は将軍に推挙される。私が将軍の座についたら腰痛軍には君の居場所はないからな。こんな所にいないで、次の職探しをした方が良いんじゃないのかね?』

筋筋膜性腰痛は、椎間関節性腰痛の後ろに居並ぶ非特異的腰痛派の面々のようにへつらうことをしてこなかった。そのツケがいずれ回ってくるとは思っていたが、いまさら手の平を返すように、変節することを良しとは出来なかった。

その様子を現将軍・脊柱管狭窄症率いる特異的腰痛派が見つめている。彼らの目にはどのように映っているのか。向けられている視線は剣呑である。筋筋膜性腰痛は、特異的腰痛派、非特異的腰痛派いずれの勢力からも、自分の存在は敵対勢力と認識されていることを改めて実感した。

議場は僅かな刺激でも爆発しそうな、一触即発の状態にあった。もはや何が起こってもおかしくない。

議長
『まもなく、国王・腰椎変性すべり症陛下がおいでになります。皆様ご起立して静粛にお待ちください。』

起立を促す議長の声に続き腰痛国国歌が流れ、議場の空気は厳かなものに一変した。国王・腰椎変性すべり症の姿を初めて目にするものも少なくない。どよめきが起こっても不思議はないのだが、わずかな吐息を漏らすことさえ憚られた。

議長
『国王陛下がおいでになります!』

国王・腰椎変性すべり症の登場に、すべての者が最高度の緊張を強いられた。1人筋筋膜性腰痛だけが慈しむように目を細め、玉座に座る国王を見つめた。

間もなく、議長による議会開催が宣言された。次期将軍選出の議題が提議されるだろう。腰痛軍評議会は将軍による緊急動議発動で流会させることが出来るが、国王の名において開かれる緊急議会を停止させる手立ては何一つない。

このまま時が過ぎれば、椎間関節性腰痛が次期将軍となるのは確定的だ。そうなれば、現将軍率いる特異的腰痛派によるクーデターは避けられない。国王・腰椎変性すべり症に危機が迫っている。筋筋膜性腰痛は時が止まるのを願う思いで、議場に掛る時計に視線を向けた。

議事が粛々と進められ、次期将軍推挙に移ろうとしていたとき、国王に仕える侍従たちの動きが慌ただしくなり、幾たびも国王・腰椎変性すべり症に耳打ちする様子が見て取れた。

筋筋膜性腰痛は一息に胸のつかえを吐き出すと、静かに瞳を閉じた。

筋筋膜性腰痛
(間に合った…。)

筋筋膜性腰痛は、刻一刻と過ぎる時計をジリジリする思いで見つめていたが、脚国下腿州の筋肉たちに協力を依頼した計画がようやく動き出し火蓋が切られた。肉を切らせて骨を断つ危険な賭けではあるが、腰痛国の国体を御璽するにはこの方法しかなかった。

筋筋膜性腰痛が摂った作戦は、全腰痛軍が総攻撃態勢をとらざるを得ないものであった。膝から下の下腿の筋肉に偏りをもたらすことで、間接的に足部や大腿部までも作戦に引き込んでしまう大規模な計画だ。

腰は、腰のみで存在するわけではない。下肢の偏りは運動連鎖を生み、必ず身体全体の姿勢の崩れを引き起こす。

足を開き気味な歩き方を継続していると、骨盤が起き上がりフラットバック姿勢となる。反対に内股歩きの継続は、骨盤がより前方へ傾き腰椎前弯姿勢となる。このような不良姿勢の継続は腰部を構成する腰椎、椎間板、靭帯、筋肉といった構造に偏った負担を強いることになる。

筋筋膜性腰痛は、脚の筋肉を巻き込むことで姿勢の崩れを誘発し、全腰痛軍を無理やり戦闘に引きずり込んだのだ。対人間戦が激化すれば、特異的腰痛派、非特異的腰痛派はそれぞれ当面の敵軍に対処せざるを得ず、国を二分する内戦は避けることが出来る。

問題は、腰痛軍がここまで大規模な攻撃を展開したことがないため、人間側の反撃が読めないことだ。筋筋膜性腰痛は独りつぶやいた。

筋筋膜性腰痛
『人間は腰痛の治し方に気づくだろうか…。』

疑惑

人間側が不意を突かれたのはもちろんだが、突如始まった大規模な戦闘に伝令が慌ただしく行き来する議場では、腰痛軍将校たちが浮足立った。

どの腰においても大勢は腰痛軍優位であったが、一部の戦場では緒戦において手痛い敗北を喫した。そして、その敗北は腰痛国の国体を揺るがしかねないものであった。腰痛国王の王弟、腰椎分離症が人間側に拿捕されたのだ。

『腰椎分離症殿下が人間側に拘束された。』との一報に議会は騒然となった。この非常事態にあっては、将軍の新旧交代などは後回しとされた。

腰椎分離症公は腰痛軍の官位を持っている軍人としての顔も持っているが、それはお飾りにすぎない。王家の人間ゆえ、腰痛軍においては最も安全な最後方で、事態の成り行きだけを見守っていれば良かった。

しかし王弟には、優秀な兄である腰痛国王・腰椎変性すべり症に対するライバル心もある。血気盛んな若君はコンプレックスを払拭するが如く、独断で部隊を率い出撃してしまった。しかし、腰椎分離症公は実戦経験がまだ乏しい。出撃するやいなや敵の偵察部隊であるX線写真に容易に発見され、硬性コルセットによる拘束を受けてしまったのだ。

腰椎分離症公は、特異的腰痛として同じ性質を持つ将軍・脊柱管狭窄症の部隊に所属する形になっていた。形式的な官位だけを与え【お客様】として遇しておけばよかったのだが、神輿として担ぎ上げる必要から機嫌を取っておかねばならなかった。血気盛んな若君に部隊を預けてしまったのは失策だった。

結果、王弟は暴走し、脊柱管狭窄症は国王・腰椎変性すべり症に激しく叱責され、腰痛軍将軍の職を罷免された。

将軍職を解任されたといっても、脊柱管狭窄症は特異的腰痛派からは絶対的な支持を得ている。しかし、神輿として担ぐべき王弟が人間側に拘束された今となっては、決起することは叶わない。錦の御旗なきクーデターは、逆賊の汚名を着た反乱軍にすぎない。

腰椎分離症公は、腰痛発症から比較的早い段階で硬性コルセットに拘束された。発見されたのが発症後期であったら、如何に硬性コルセットで拘束されようが、腰椎分離すべり症に成長する可能性がある。しかし、早期発見であったため、腰椎は癒合し治癒してしまうだろう。王家の一員として権勢を振るう目は完全に消えた。

罷免という不名誉な形で将軍職を追われた脊柱管狭窄症は、力なく筋筋膜性腰痛の傍らにきて話しかけた。

脊柱管狭窄症
『君にはすっかりやられたよ。君が密かに脚国に潜入した情報はつかんでいたが…。まさか、腰椎分離症殿下まで戦場に追いやる工作をしていたとは…。殿下は虜囚の身だが、一歩間違えばお命を落とされかねなかった。恐ろしい男だな君は。』

筋筋膜性腰痛
『…。』

脊柱管狭窄症の言葉は半ば当たり、半ば見当外れのものであったが筋筋膜性腰痛は黙っていた。この期に及んで何を言ったところで、言い訳にしかなるまい。結果的にクーデターを未然に防ぐことになったが、国王陛下の王弟が人間側に拘束されたの計算外だった。

内戦を回避するためとはいえ、自らが仕掛けた作戦が連鎖的に拡大する事態に、筋筋膜性腰痛自身でさえ固唾を飲んでいた。

脊柱管狭窄症
『特異的腰痛派の動きは、全て君に筒抜けだったんだな。そのことに気づかなかったんだからな、私も老いた。私は腰痛軍を去るが…。筋筋膜性腰痛君、腰椎分離症殿下の御身だけは何としても奪還してくれ。』

脊柱管狭窄症は王弟の身を安んじる言葉を残し、踵を返して議場を後にした。筋筋膜性腰痛は年老いた軍人の背中に深々と頭を下げた。

筋筋膜性腰痛
『閣下…。』

筋筋膜性腰痛は年老いた将軍を尊敬していた。人間の最終末期にまで痛みを起こす粘り強い戦い方。馬尾神経に与える影響は、他のどんな腰痛にも引けを取らない。部下を思いやる度量。そして何より、無私であった。生涯を腰痛国のために捧げた。

脊柱管狭窄症、筋筋膜性腰痛そのどちらもが私利私欲など頭の片隅にもない。双方とも、ひとえに腰痛国の安寧だけを願い行動していた。立場の違いによって、その行動が違っただけであった。




3か月後

腰痛国と人間側の戦いはさらに拡大し、双方総力を挙げての大規模な全面戦争の様相を呈していた。将軍職は一時的に空席とされ、国王・腰椎変性すべり症が統帥権に基づき全軍を掌握していた。

筋筋膜性腰痛は当面の敵に対峙しながらも、腰椎分離症公がどこの整形外科で拘束されているかを部下の筋肉に探らせていた。奪還には多裂筋性腰痛部隊の大半を投入した。筋肉のセンシティブな痛みを起こし、人間を攪乱することで腰椎分離症公に目を向けさせなかった。その隙に乗じ御身奪還を成功させた。

3か月の硬性コルセットによる拘束で、分離部は半ば癒合しかけていた。王弟が腰椎分離症として今後も腰の痛みを起こすことが出来るのかは、微妙な状態だ。

しかし、その方が良いのかもしれないと筋筋膜性腰痛は考えていた。兄上の国王・腰椎変性すべり症陛下とは、その痛みを起こすことにおいて格段の能力差がある。今後は王家から離れ、腰の一部として穏やかに過ごすことを選択するのが寛容だろう。

筋筋膜性腰痛は王家の今後を憂慮しつつも、自軍の展開状況に考えを戻した。瞑目して頭の中を整理しているとき、多裂筋性腰痛が遠慮がちに声をかけた。

多裂筋性腰痛
『閣下、実はお耳に入れたいことが…。』

筋筋膜性腰痛
『…ん?』

多裂筋性腰痛
『腰椎分離症殿下奪還に向けて全国の整形外科を捜索していた時のことですが、妙な光景を目撃いたしました。お耳に入れるべきか迷ったのですが…。』

筋筋膜性腰痛
『構わん、続けてくれ。』

多裂筋性腰痛
『は、では…。潜入捜索中のある整形外科に、椎間関節性腰痛閣下が自らおいでになったのです。招き入れられた部屋には、1%リドカイン、5mL注射筒、23号カテラン針が用意されておりました。』

筋筋膜性腰痛
『椎間関節ブロック注射か。』

多裂筋性腰痛はその様子を収めた数枚の写真を提示し、ここまで言うとその先は口を噤んだ。筋筋膜性腰痛は全てを理解した。多裂筋性腰痛は、自らが所属する非特異的腰痛派最大の実力者椎間関節性腰痛の重大な嫌疑を打ち明けたのだ。

筋筋膜性腰痛
『このことを、他には?』

多裂筋性腰痛
『いえ、他言しておりません。』

筋筋膜性腰痛
『今後もそうしてくれ。私から直接国王陛下に御報告申し上げる。』

椎間関節性腰痛の疑惑を筋筋膜性腰痛がつかんでから程なくして、将校たちもおかしな現象に気づき、その嫌疑を囁き始めた。椎間関節性腰痛の部隊が全く動いていないのだ。姿勢の崩れによる影響でイの一番に腰痛を起こすのは椎間関節であることは、腰痛ならば知らぬ者はいない。

筋筋膜性腰痛
『早急に陛下にお伝えしなくては。』

邂逅

脊柱管狭窄症が腰痛軍を去ってから、椎間関節性腰痛の専横ぶりは露骨なものであった。国王の身の安全という大義名分の下、その行いは軍内部に止まらず、国王・腰椎変性すべり症に通じるあらゆるルートには椎間関節性腰痛の息が掛った者が配置された。

椎間関節性腰痛を経由しなければ、何人たりとも国王へ上奏することは叶わなかった。外部との連絡手段を絶たれ、国王・腰椎変性すべり症はもはや軟禁されているに等しい状態で、苛立ちはピークに達していた。

腰痛国王・腰椎変性すべり症
『余は、いつまでこうしておればよいのだ!』

椎間関節性腰痛
『陛下、人間との戦いはいまだ予断を許さぬ状況にあります。またそれだけにとどまらず、腰椎分離症殿下の例もございます。我が軍内部にも、陛下の御身を狙う輩がおらぬとも限りません。いましばらくの御辛抱を。』

腰痛国王・腰椎変性すべり症
『そちでは話にならぬ。他の者を連れてまいれ。』

椎間関節性腰痛
『陛下が統帥権に基づき我が軍を直接指揮できるのもあと僅か。実質的に軍を掌握しているのが誰か…。ご存じなかったですかな?』

腰痛国王・腰椎変性すべり症
『くっ…。』

椎間関節性腰痛
『それより陛下、そろそろ次期将軍を選任せねばなりませぬな。前将軍解任から、間もなく6カ月になろうとしております。私も参謀長の職がそろそろ飽きて参りました。』

腰痛国王・腰椎変性すべり症
『もうよい!さがれ!』

言葉は催促というよりも脅迫と言ってよいものであった。椎間関節性腰痛のあまりに無礼な言に、国王・腰椎変性すべり症は手近にあった報告書の束を投げつけた。

椎間関節性腰痛は床に落ちた書類を一瞥すると口元に笑いを浮かべ、一言も発しないまま国王の執務室から退室した。

専制君主制ではなく立憲君主制である腰痛国では、国王と云えどその行動は憲法の規定に縛られる。将軍不在の場合、6カ月に限って国王が将軍に代り全軍を統帥できるが、その期限をむかえる前に将軍を選任しなければならない。

国王・腰椎変性すべり症は、言葉巧みな逆臣にいとも簡単に篭絡され、多くの権限を与えてしまったことを悔いた。今となっては傀儡に堕してしまった自らの不明を恥じるしかなかった。

脊柱管狭窄症を遠ざけたのは失策だった。彼の苦言の数々は、国王として至らない自らに責があったのだとようやく気付いた。忠臣からの耳に痛い言を受け入れることが出来ず、逆臣の讒言に耳を傾けた自分は愚かであった。

特異的腰痛派は非主流派とはいえ、脊柱管狭窄症が率いている間は軍内においてある種のセーフティシステムとして機能していた。ところが、求心力あるトップを失い、組織としての一体性は失われた。もはや、勢いを増す椎間関節性腰痛を抑えることが出来る勢力はどこにもなかった。

軍を統帥できるのもあと僅かだ。議会の開催も差し迫っている。国王・腰椎変性すべり症は焦燥していた。

国王・腰椎変性すべり症
『どうすれば良いのだ…。』




筋筋膜性腰痛は執務室で将校たちとの作戦会議を終え、多裂筋性腰痛だけを残し人払いした。

筋筋膜性腰痛
『例の件だが、いまだ陛下にお伝えできずにいる…。君の意見を聞きたい。』

多裂筋性腰痛
『参謀長の疑義についてですね。』

多裂筋性腰痛は椎間関節性腰痛を名で呼ぶことはせず、閣下という敬称もつけなかった。裏切り行為に対し、嫌悪しているのであろう。筋筋膜性腰痛はこの男のこういうところを好んでいた。

筋筋膜性腰痛
『陛下に繋がるあらゆるルートに、自分の息が掛ったものを配している。陛下に近づくことはおろか、連絡を差し上げることすらできない。うかつに動けば椎間関節性腰痛派に切り札を握りつぶされてしまう。』

多裂筋性腰痛
『国の機関にとどまらず、放送局も参謀長の手の内に落ちています。』

筋筋膜性腰痛
『手詰まりだ。だが、何とかしなければ。議会開催が迫っている。陛下にお伝えする手立てがないものか。』

多裂筋性腰痛
『狡賢い男です。自らの利益のためなら、人間と取引すらするのですから。』

筋筋膜性腰痛
『人間と取引…?人間と…、人間と…。それだ!』

多裂筋性腰痛
『閣下、人間側と取引されるおつもりですか?』

筋筋膜性腰痛
『そうじゃない。人間側に誤った情報をリークするんだ。椎間関節性腰痛派は人間と繋がってはいるが、操作するというところにまでは及んでいない。これならいける!』

筋筋膜性腰痛は作戦の詳細を話した。自分たちが手に入れた、椎間関節性腰痛による裏切りの情報を国王に伝えなければならないが、そのためには国王と接触しなければならない。しかし、腰痛国内では椎間関節性腰痛派の目が光っていてそれも適わない。そのため、椎間関節性腰痛の監視が手薄な、人間側のテリトリーで国王と接触する方法をとることにしたのだ。

腰椎変性すべり症には牽引治療は禁忌だ。しかし、この情報は人間側に広く知れ渡っている訳ではない。そこで、腰椎変性すべり症を治すには牽引治療が効果的である、という誤った情報を流布し、接骨院や整形外科に腰椎変性すべり症患者誘導するのだ。

人間側のテリトリーである接骨院や整形外科では、椎間関節性腰痛といえど自由に振る舞うことはできない。そこで国王・腰椎変性すべり症と接触し、椎間関節性腰痛による裏切りの情報を手渡す算段だ。

もはや一刻の猶予も許されない。計画は早速実行に移され、筋筋膜性腰痛自らが潜入した。

筋筋膜性腰痛
(思ったとおりだ。椎間関節性腰痛は陛下を監視できていない。)

低周波治療器を終えた筋筋膜性腰痛は、先にマッサージベッドに移っていた。国王もまもなく牽引治療を終え、隣のマッサージベッドに移動してきた。人間側のテリトリーとはいえ油断はできない。声を潜めて話しかける。

筋筋膜性腰痛
『陛下。陛下。』

国王・腰椎変性すべり症
『先生!』

思いもかけない筋筋膜性腰痛の声に腰痛国王は驚きの声をあげた。筋筋膜性腰痛は人差し指を口に当てて制した。

筋筋膜性腰痛は国王が腰痛軍士官学校に入るまでの間、国王の教育係を務めていた。その関係性を椎間関節性腰痛から危険視され、久しく国王から遠ざけられていた。思わぬ形で十数年ぶりの邂逅となった。

筋筋膜性腰痛
『陛下、これを。』

筋筋膜性腰痛は、椎間関節性腰痛の裏切りに関するデータを収めたメディアを手渡すと、素知らぬふりをして施術ベッドを離れた。

椎間関節性腰痛の力がいかに強大であろうと、裏切りの事実が露見すれば権力からの失墜は免れない。

軍において85%を占める非特異的腰痛派の首領であろうと、国王を盾に国の中枢を握ろうと、人間側との取引は腰痛としての自らの存在を否定することを意味する。これが白日の下に晒されれば、腰痛国王国民でその背信行為を許す者はいない。

火は放たれた。手渡したデータは、筋筋膜性腰痛にとっても国王・腰椎変性すべり症にとっても唯一無二の切り札だ。この小さな火種が業火となり筋筋膜性腰痛自らの身を焼き尽くすことになるのか、椎間関節性腰痛を権力の座から追い落とすことになるのか、国王・腰椎変性すべり症の決断に賭けるしかない。

逆転

再び開かれた議会開催前の議席で、椎間関節性腰痛は実力派の将官や大臣たちからの挨拶への対応に追われていた。今回の議会で椎間関節性腰痛が国王からの詔勅により将軍となることは周知の事実であった。今後の自らの立場を有利にしようとする者たちは、椎間関節性腰痛への取り入りに余念がない。

筋筋膜性腰痛は離れた席で、一人静かに瞑目し腰痛国の行く末を憂いていた。国王・腰椎変性すべり症が椎間関節性腰痛の力の前に屈するのか、呪縛から逃れるのか、いずれにせよ今日この場で国の将来が決する。その評価は後世の腰痛たちがくだすであろう。

筋筋膜性腰痛はここしばらくの激動に疲れていた。議会に行きかう多くの言葉も、木々の葉が風に揺れる音のようにしか聞こえなかった。国王が登場したことにも気づかず、詔勅が読み上げられていることにも気づかなかった。

議長
『筋筋膜性腰痛君!。筋筋膜性腰痛君、起立願います!』

自分の名が何度目かに呼ばれた時、筋筋膜性腰痛は我に返った。

議長
『筋筋膜性腰痛君。起立願います。』

ようやく言葉の意味を理解し立ち上がった時、周囲の腰痛たちの視線が自分に向かい、唖然とした表情をしていることに気づいた。

議会最上段の国王と視線が交錯した。それを確認すると国王・腰椎変性すべり症は再び詔勅を読み上げた。

腰痛国王・腰椎変性すべり症
『腰痛国王・腰椎変性すべり症の名において、筋筋膜性腰痛を腰痛軍将軍に任ずる。』

筋筋膜性腰痛
『国王の名において…。腰痛軍…。将軍…。私が…。』

筋筋膜性腰痛が国王が発した詔勅を理解出来ずにいるとき、椎間関節性腰痛派の一群から怒号が起きた。議会は騒然としたが、国王の厳かな声に再び静けさを取り戻した。

腰痛国王・腰椎変性すべり症
『筋筋膜性腰痛。余の名において、そちを腰痛軍将軍とする、異議は受けぬぞ。我が腰痛国のために、今後もより一層働いてくれることを希望する。』

国王・腰椎変性すべり症は筋筋膜性腰痛から視線を議場に移すと、一人の侍従に合図を送った。それを受け、議会の巨大スクリーンに椎間関節性腰痛の裏切り行為の映像が映し出された。映像には医師との和やかな談笑の様子や椎間関節ブロック注射の様子が克明に収められていた。もはや言い逃れは不可能だ。

国王・腰椎変性すべり症
『この者は我が腰痛国に対する反逆者である。賊を捕らえよ!』

国王の言葉に、おずおずと遠慮がちではあったが、椎間関節性腰痛は周囲の腰痛に包囲された。

今回の議会の様子はリアルタイムで腰痛国全域にテレビ中継されている。椎間関節性腰痛は自身が将軍に推挙されることを疑わず、配下の放送局にその旨指示を出していた。

自らが腰痛国の実質的支配者であることを、国の内外に知らしめるつもりであったが、そのことが裏目に出てしまった。議会内だけのことであるならば、強大な力を利用して封じ込めることも出来たはずだが、広く国民周知のこととなっては、もはや権力の座に留まることはできない。

議会に出席している将官や他の者たちもそのことを理解していた。椎間関節性腰痛は天の頂から地に落ちた。この後に待っているのは塗炭の苦しみを味わう地の獄であろう。

あっけない幕切れであった。内戦や自身の処刑をも覚悟していた筋筋膜性腰痛は、議席に崩れ落ち、呆けたように虚空を見つめていた。



その時、轟音とともに議会の建物が大きく揺れ、天井を突き破り多数の金属の塊が飛来してきた。議会の場は阿鼻叫喚の戦場と化した。

『鍼だ!逃げろーっ!』

『人間が腰の深部まで届く鍼を打ってきたぞ!』

国王の玉座近くにも鈍く光るステンレスの鍼が突き刺さっている。今までにない人間側の反撃が開始されたのだ。

現代では皮膚直下5ミリほどにしか刺さない鍼が主流となっているが、こじれた腰の痛みにはそれでは効果が薄い。そのことに気づいた一部の人間は、今までとは戦法を変え、腰の奥深くにまで到達する極めて多くの鍼を打ち出したのだ。このような戦法をとられては腰の深部まで血液循環が改善してしまう。腰痛たちは逃げ惑うしか術がなかった。

筋筋膜性腰痛は逃げ惑う腰痛たちの群れをかき分け、玉座に駆け寄った。

筋筋膜性腰痛
『陛下っ!陛下!…陛下ご無事ですか!』

玉座に覆いかぶさる瓦礫をかき分け、必死で腰痛国王を探した。国王・腰椎変性すべり症は腰から僅かに出血していたが、意識もはっきりしていて命の危険はないようだった。

筋筋膜性腰痛
『陛下…。腰の傷は浅くお命に別条ありません。お気をしっかりお持ちくださりませ。』

国王・腰椎変性すべり症はかつての師を少年のような瞳で見上げた。

国王・腰椎変性すべり症
『先生。我が国をよろしくお願い致します。』

筋筋膜性腰痛
『しかし、私のようなものに腰痛軍将軍が務まりますかどうか…。』

国王・腰椎変性すべり症
『先生は私が幼きみぎり、このようにお教えくださいました。…考えねばならぬは我が身ではなく国民の安寧である…と。』

筋筋膜性腰痛
『…。』

国王・腰椎変性すべり症
『再び申す。筋筋膜性腰痛!余の名において腰痛軍将軍を任ずる!指揮をとれ!』

筋筋膜性腰痛が放った小さな火種は、内なる炎として大きく燃え上がった。駆け付けた侍従に国王を託し、短く敬礼をすると議場に向き直り号令を発した。

筋筋膜性腰痛
『我が名は筋筋膜性腰痛、腰痛軍将軍である!総員戦闘配置につき攻撃を開始せよ!』

抵抗

腰痛国において権力の逆転劇が起きているころ、人間の世界では腰痛に対する変化の兆しが起きていた。その変化は小さな萌芽であったが、腰痛に対する対応を根底から覆しかねないものであった。

始まりはごく弱いラジオの電波によるものだった。出力が弱いため、多くの耳には届いていなかったが、そのメッセージをキャッチした者はレジスタンス(抵抗軍)として立ち上がり始めていた。



『この放送が、どれほどの人に届いているのか分からない。ジッ、ザザッ、…人類はいつから腰痛に苦しんできたのか…、ジジジッ、20世紀我々は医療技術の発達によっていくつかの腰痛を克服してきた。しかし、21世紀を…ズジッ、…ても、いまだ多くの腰痛を克服できていない。』

雑音交じりの放送は静かにメッセージを伝え続ける。

『ジジジ、ザァーッ、…コマーシャリズムに惑わされてはいけない。大手メディアの情報の一部にはバイアスが掛っている。慢性的な腰痛にパップ剤や鎮痛薬を使い続けてはいけない。その行為は、抜け出せない泥沼に自ら沈み込んでいくようなものだ。湿布や鎮痛薬は確かに痛みを抑制する。しかし、使い続けてはいけない。それらを使い続けた結果として起こるのは、腰の慢性的な血流障害だ。』

ラジオは、なおも続ける。

『…考えてみてほしい。慢性的な血流障害が起きている腰が、果たして治るのかを。考えてみてほしい、製薬会社は慢性腰痛患者が治ることを望んでいるのかを。慢性腰痛患者が治ってしまえば、製薬会社にとって大きなドル箱を失うことを意味する。自らの首を絞める行為を行うだろうか?考えてみてほしい、大手メディアがスポンサーの機嫌を損ねることを言えるだろうか?』


『腰痛の治し方はパップ剤を貼り続けることでもなければ、鎮痛薬を使い続けることではない。血流障害を改善し、患部の細胞に新鮮な酸素と豊富な栄養をもたらすことだ。』

『そして、体幹部を鍛え疲労しない腰を構築すること。良好なアライメントを維持するための筋力を確保すること。不良姿勢の継続を控え、極力こまめに姿勢を変えること。』

『…何度でも言おう。慢性的な腰痛を治す鍵は血流障害の改善にある。ジジッ、…人類よ立ち上がれ。腰痛は克服できる。ザザザッ、…今あなたは腰痛に苦しみ、先の見えない状態に不安を抱えているかもしれない。ジッ、ズジッ、…どんなに暗く思える夜でも、開けない夜はない。希望を持ち続けることだけは忘れないでほしい…ジジジッ、ズッ、ザアァァー…。』

腰痛の治し方 / まとめ

手術などの医療技術の発達で人類は多くの多くの痛みを克服してきました。いくつかの腰の痛みもそれに含まれます。しかし、いまだ人類は全ての腰痛を克服出来ずにいます。それは、85%の腰痛が画像検査や血液検査などで発見できない非特異的腰痛であるためです。

非特異的腰痛は構造上問題ではなく、機能不全に起因しています。機能不全を改善するためには、あなたが意識を変える必要があり、生活習慣の見直しが必要な場合もあります。

また、慢性的な腰痛症状にパップ剤と鎮痛剤の継続使用はお勧めできません。それは、血液循環を阻害してしまうためです。腰を治すためには血液循環を改善し、細胞に活力を取り戻す必要があります。その結果、柔軟でニュートラルな腰を再構築することが可能になります。
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