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鍼灸いちご治療院 鍼灸師・八幡太郎 執筆・監修

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コンパートメント症候群による腰痛

胸腰筋膜性腰痛 【鍼灸師が執筆・監修】

胸腰筋膜解剖図
コンパートメント症候群の一種である胸腰筋膜性腰痛の症状、構造、原因、治療について説明しています。

あなたの腰痛は腰から背中にかけて広い範囲が痛みませんか?
スポーツや肉体労働をする機会が多いのではありませんか?

もしかしたら、あなたの腰の痛みの原因は胸腰筋膜かもしれません。
このページは以下の項目で構成されています。

鍼灸いちご治療院 院長・鍼灸師 八幡太郎このサイトは鍼灸いちご治療院が運営しています。

記事については医療系国家資格である鍼灸師の八幡太郎が執筆・編集・監修しています。

広範囲に及ぶ症状

胸腰筋膜性腰痛には以下のような症状がみられます。いくつか当てはまるようでしたら、胸腰筋膜が原因の可能性があります。

具体的症状と発症エリア

胸腰筋膜に問題が生じると腰から背中にかけて、広範囲に及ぶこわばりや引きつるような感覚があり、張っているような痛みの症状があります。

具体的な症状

  • 腰から背中にかけて張っているような痛みがある。
  • 仕事やスポーツで肉体を酷使している自覚がある。
  • 腰痛の他、脚や腕も故障しやすい。
  • 腰だけではなく臀部にも痛みや違和感がある。
  • 腰にこわばりや、引きつるような感覚がある。
  • 腰にだるさや重さを感じる。
  • 冷やすよりも温めた方が痛みが緩和する。(筋疲労)
  • 温めるよりも冷やした方が痛みが緩和する。(筋膜炎)


胸腰筋膜性腰痛の疼痛領域
症状のエリア

症状が慢性化すると@やA付近は押されると、体をよじって逃げたくなるような痛みを生じることがあります。

症状には以上のような特徴があります。

何故そのような症状が現れるのか、構造と原因の項目で生体力学的な理由を解説します。


あなたの腰の痛みがここまでに記載した症状と違っていたら、別の疾患かもしれません。

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結合組織の骨格 / その構造と原因


胸腰筋膜は【結合組織の骨格】と表現されることもあり、腰部から胸部の広範囲に広がり体幹部を支えています。

体幹部は胸部が肋骨に支持されているのに比べ、腰から腹部にかけては肋骨のような骨性基盤がありません。主に筋肉が腰部と腹部を支えているのですが、それを強固にしているのが胸腰筋膜です。


胸腰筋膜の役割

人が腰をかがめて重い物を持ち上げるとき、背筋と呼ばれる脊柱起立筋が主に活動します。しかし、背筋の力だけでは本当は35キロ以上の物を持ち上げる事はできません。

その行動を可能にしているのが靭帯や腹部の内圧の他、胸腰筋膜の支持力です。
腰の筋肉と胸腰筋膜の関係を例えるならば、魚肉ソーセージとそれを包むフィルムのような関係です。

缶ジュースを吊り上げる図缶ジュースを吊り上げ不可の様子

フィルムが存在する魚肉ソーセージでは350ccの缶ジュースを持ち上げる事が可能ですが、フィルムが存在しない状態では張力が極端に低下し持ち上げられません。

実際の腰では、胸腰筋膜が存在しないと中腰を維持する事すらできません。

筋肉が収縮したとき、膨張しすぎないように胸腰筋膜が押さえ込む事で支持力が増し、大きな力を発揮できています。

天然のコルセットと言ってもよく、この強固な胸腰筋膜が存在する事で我々は二足歩行を可能にしています。


胸腰筋膜の構造

胸腰筋膜と腰の筋肉の断面図
胸腰筋膜は表層、中間層、深層の3層構造で成り立ちます。

腰の部分の断面の模式図です。
青色の部分が胸腰筋膜です。





  • 表層は浅葉・深葉の2葉で構成され、いわゆる背筋と呼ばれる脊柱起立筋群を覆っています。
  • 中間層は腰方形筋の背側に位置し、外側は側腹部の筋肉に繋がっています。
  • 深層の膜は腰方形筋の外筋周膜と呼ばれる膜に由来し、腰方形筋の前面を包んでいます。


機能障害に陥る原因

主にオーバーユースが原因です。そのため、スポーツの競技者や肉体労働をされる方に多く発症します。

胸腰筋膜は侵害受容器と呼ばれる痛みを感じるセンサーが発達しています。

筋肉をハードに使うスポーツや肉体労働では、微細な筋線維の損傷が日々起きています。その治癒過程で損傷した細胞を白血球のマクロファージが貪食します。

その時、痛みを起こす物質(主にブラジキニン)が分泌されます。この痛みを起こす物質が筋膜を刺激すると痛みが起こります。

コンパートメント症候群としての側面

胸腰筋膜の解剖図
肋骨に支えられていない腰部から腹部の安定性を裏打ちしているのが、胸腰筋膜の存在です。

胸腰筋膜を介しコアマッスルの多裂筋、側腹部の腹横筋、外腹斜筋、内腹斜筋など腰部から腹部の筋肉は1つに包まれ、協調して収縮し腹腔内圧を高めています。

この事により体幹部は安定性を得ています。これをコア・スタビリティと言います。

コア・スタビリティ模式図


左図は胸腰筋膜と腰部・側腹部の筋肉の働きによる、コア・スタビリティの模式図です。

コンパートメント症候群はこのコア・スタビリティが裏目に出てしまった状態です。

筋肉は筋膜を境に1つ1つの区画に分かれています。



コンパートメント症候群は本来、膝から下のふくらはぎに好発します。

ふくらはぎでは深部にある区画(コンパートメント)の筋肉に問題が起きます。深部にある筋肉は周囲を筋肉で囲まれているために、筋肉自身の内圧を逃がす事ができないためです。

腰部の胸腰筋膜の強靭さはふくらはぎの筋膜の比ではなく、そのため疲労し筋内圧が高まった筋肉は、浅層の筋肉ですら筋肉内の圧力を逃がす事ができません。


癒着による弊害

競技や肉体労働で長期間にわたり同じ筋肉の動きを続けていると、筋肉が骨に付着している部分(起始部・停止部と言います)の付近の筋膜は癒着や変形を起こす事があります。

胸腰筋膜性腰痛の疼痛領域
@やAの部位に好発し、こわばりや引きつるような感覚、張っているような痛みがあります。

オーバーユースが限度を越し慢性化した状態では、この部位を押されると身をよじり逃げたくなるような痛みを起こす事があります。

@は下後鋸筋、広背筋と呼ばれる筋肉と胸腰筋膜が癒着を起こした場合、引きつるような感覚が生じます。



Aは多くの腰部の筋肉や胸腰筋膜が骨盤に付着する部分で、負荷が掛かりやすい部位です。

腰や側腹部の筋肉は胸腰筋膜の下を滑るように動いて収縮します。
癒着や変形が起こると、この滑る動き(滑動性)が低下・停止してしまいます。これが腰背部の運動連鎖に問題を起こします。

胸腰筋膜が癒着や変形を起こすと、いわゆる【腰の切れが悪い】状態になり、脚や腕の故障を起こしやすくなります。


胸腰筋膜が機能不全を起こすと、筋肉の内圧が高まり循環障害が起きます。その結果、阻血性の痛みを発症します。その状態が極度に高まり筋細胞の壊死すら起きているのがこの疾患です。

ここまでに解説した構造上・機能上の原因が釈然としないようでしたら、別の原因を考えた方が良いかもしれません。


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治すために重要な4つのポイント


胸腰筋膜の機能障害を改善するためには、重要な4つの治療ポイントがあります。この疾患の治療では、患部と反対側の臀部に重要なポイントがあります。

背中から腰にかけては胸腰筋膜を介した、【広背筋】+【胸腰筋膜】+【大殿筋】で成り立つ【胸腰筋膜システム】と呼ばれるクロスする運動連鎖が機能しています。

改善するために必要な4つの治療ポイント
  • 患部とは反対側の臀部に治療ポイントがある。
  • 患部の筋肉内圧を逃がす。
  • マッサージや指圧を行わない。
  • 癒着や変形を解消する。



ポイント1

胸腰筋膜が癒着や変形を起こすと、異常がない筋肉の動きにも影響を及ぼします。胸腰筋膜システムは、大殿筋を中継して脚の動きに重要な大腿筋膜張筋、腸脛靭帯と密に関係します。

クロスの運動連鎖
そのため、胸腰筋膜の障害は脚の故障にもつながり、広背筋を介した腕の故障にも影響します。

胸腰筋膜に原因がある場合、クロスする運動連鎖を考慮する必要があります。



例えば、右側の腰に筋膜性の腰痛症状があるなら、左の大殿筋の治療は必須です。

ポイント1
腰と臀部は治療上切り離すことが出来ない一体不可分の関係にあります。このことに視点を向けられるか否かで治療結果に大きな差が生まれます。



ポイント2&3

前項の【構造と原因】でも触れましたが、胸腰筋膜性腰痛はコンパートメント症候群としての側面もあります。

症状が起きているのは、オーバーユースによる筋肉内圧の異常な高まりにあります。そのため、まず高まった筋肉の内圧を逃がす必要があります。

強めのマッサージしている様子
ここで注意が必要なのは、強めのマッサージや指圧は厳禁ということです。

胸腰筋膜は垂直方向での強い圧力を加えると緊張度が増してしまうのです。つまり硬くなってしまいます。


緩く優しい圧力で皮下を滑らせるように行うマッサージなら筋疲労に効果的ではあるのですが、筋肉の感覚はそのようなマッサージでは施術を受けた気にならず、疲労感が取れた感覚が生じません。

これが問題なのです。筋肉の欲求に従い強いマッサージを加えてしまうと、筋膜を硬くし悪循環に入り込む事になってしまいます。

ポイント2&3
胸腰筋膜を硬くせずに筋肉の内圧を逃がす。この相反しかねない体の欲求を満たす必要があります。



ポイント4

腰から背中にかけて引きつるような感覚があったり、腰の切れが悪いと感じる場合、胸腰筋膜の癒着や変形が起こっている可能性があります。

胸腰筋膜が広背筋や下後鋸筋と呼ばれる筋肉と癒着が起こると、癒着した部分では筋肉と胸腰筋膜は滑る事ができません。

運動連鎖によるバランスの崩れ
たった1か所の癒着が全身の運動連鎖を阻害することがあります。

体幹部の柔軟性が低下すると、他の部分に過剰な負荷がかかるため肘や肩、膝などに故障を起こしやすくなります。


これを防ぐためにも癒着や変形を解消する必要があります。部分的な変形までなら筋膜リリースの手技で対応可能だと思います。

しかし、慢性に経過した陳旧性の癒着ではリリース手技では十分な効果を得ることは難しく、1歩踏み込んだ治療が必要です。

ポイント4
腕や脚の故障を防ぐため、胸腰筋膜の癒着や変形は解消する必要があります。慢性化した癒着には1歩踏み込んだ治療が必要です。



実際の治療

私の治療では上記に挙げた4ポイントに視点を向け鍼治療を行ないます。

まず大殿筋が付着する仙骨の際に鍼を並べて刺していきます。
その後、大殿筋の筋腹に刺鍼し確実に緩めます。

大殿筋の仙骨際の鍼治療大殿筋筋腹3寸鍼刺入写真


次に癒着が生じることが多い広背筋と下後鋸筋が重なる部位に施術します。負荷がかかりやすい骨盤の際も同様にしっかり鍼を効かせていきます。

広背筋・下後鋸筋の鍼治療骨盤の際にしっかり効かせる鍼治療

癒着は、体がその部位を異物と認識できないとそのまま存在し続けます。

鍼で癒着部分を貫き小さな傷を沢山つけると、体は癒着部分を異物と認識し白血球のマクロファージの働きを活発にします。

鍼治療は白血球数を増加させ、遊走速度を高める効果に優れています。太めの鍼を使うことで、白血球の活動性を最大限に引き出します。

細く短い鍼の見本
そして、症状を引き起こしている最大の要因である、筋肉の内圧を逃がす治療を行ないます。

極めて多くの鍼を使うことで筋膜は緊張が解け、筋肉は高まった内圧から解放されます。



ここで使用する鍼は、写真でもお分かりになるかと思いますが、細く短い鍼です。刺すときには、痛みを感じることはありません。



胸腰筋膜性腰痛 / まとめ

胸腰筋膜性腰痛への治療アプローチ法は鍼治療だけではありませんが、長期間にわたる慢性化したものや、コンパートメント症候群、陳旧化した癒着の問題がある場合、優しい治療では効果を期待するのは難しく、しっかり効かせる治療が必要です。

針治療を受けた経験がない方は、
腰痛の鍼灸のページをご覧ください。針治療のメリットやデメリット、針治療が適す腰痛なのか否か、針治療にはどんな手法があるのかなど解かりやすく解説しています。

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※施術中の写真で特殊鍼を使っているものもありますが、
原則的にはそれらの特殊鍼を使わず、追加の費用が発生しない形での対応としています
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